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「戦争の記憶を語り継ぎたい」--ヤフー宮坂社長が主導する100年がかりの一大企画

井指啓吾 (編集部) 撮影:津島隆雄2015年06月23日 12時00分
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 終戦から70年目を迎える今年、ヤフーが100年がかりのプロジェクトを開始した。6月23日から、戦争について聞いた話や、その情報に触れて感じたことなど、テキストと画像による投稿を特集ページで今後100年間受け付ける。投稿されたデータはヤフーのサーバに保存し、100年後にヤフーのサービス上で展開するとしている。

  • 「未来に残す、戦争の記憶~100年後に伝える、あなたの思い~」特集ページ

 「未来に残す、戦争の記憶~100年後に伝える、あなたの思い~」と題した企画で、戦争当時の人々が考えていたこと、体験したこと、感じたことなどを忘れないために、今ある情報を100年後の世代に向けて伝えることを目的としている。

 ユーザーによる投稿を募るほか、報道機関と連携した企画も随時展開していく。具体的には、全国紙をはじめとした新聞社や通信社5社と連携し、70年以上前の写真や文章などの当時の情報を生かした企画を展開したり、各社による戦後70年の特集企画のリンク集を掲載したりする。なお、3月10日に公開した、東京大空襲を様子を伝える特集企画もこのプロジェクトの一環だという。

 終戦した1945年に小学校1年生(国民学校初等科1年生、6歳)だった人は、2015年には76歳になる。当時を知る人々が少なくなる中、実体験をもとにした戦争の話を聞ける機会は確実に減っている。「この10年がラストチャンス」と話すのは、ヤフー代表取締役社長の宮坂学氏だ。このプロジェクトは宮坂氏が主導して準備を進めてきた。


ヤフー代表取締役社長の宮坂学氏。プロジェクトリーダーとして、この企画を主導している

 「ヤフーが企業として戦争の善悪を問うたり、オピニオンを発するのではなくて、当時起きたことや人々が感じたことを淡々と残していく。その情報を得て、何をどう考えるかは人それぞれでよい」。宮坂氏はプロジェクトのコンセプトをこう説明する。

 ヤフーではこれまでに戦争特集のほかにも、「東日本大震災」や「阪神淡路大震災」などの特集企画を同様のコンセプトで実施してきた。戦争や災害などの出来事の記録は、次の世代が物事を考えるときの材料になり、教訓として生かすことができる。過去と現在の出来事の一次情報を後世に伝えること――。宮坂氏はそれをインターネットメディア、またポータルサイトとしての責務だと考えているようだ。

 「これまで、インターネットは『つながりが弱い』と言われてきたが、SNSやメッセージングアプリの発展と浸透によって、横(同世代や共通点がある者同士)のつながりができるようになった。ヤフーがやらなければならないのは、縦(世代の違う人や考えの異なる人)をつなぐこと。本来、情報を長期間保存したり、多くの情報をまとめて発信したりするのは、紙よりもネットのほうが得意なはずだ」。

 ヤフーはこのような特集企画を展開する際、トップページなどの広告を下ろし、特集ページへの誘導枠を設けることがある。阪神淡路大震災の特集で広告を下ろした際には、売り上げへの影響について「具体的な数値は出せない」としながらも、「Yahoo! JAPANの収益の柱である広告事業で、さらに最も人が集まるトップページ(Yahoo! JAPAN全体PVは月間約600億)の広告を下ろすことはとても大きな決断」とコメントしていた。

 宮坂氏も「収益面だけを考えると、普通に広告を販売するほうがもちろん正しい」と苦笑いをするが、そこには国内で最も人を集めるインターネットメディアとしての強い覚悟が垣間見える。

 「ヤフーは、多くの皆さんに使っていただいて、これだけ大きな会社になった。だから、年に何回かはそのお礼として、世の中のためになることをしたい。戦争や災害を忘れないための特集などは、これまでに“先輩メディア”にあたる新聞社や出版社、テレビ局などの人たちもしっかりとやってきている。我々だけそれをせずにメディアに“タダ乗り”するのはダメだ」と宮坂氏。一方で「自分の祖父が戦争で亡くなっているというのも(きっかけとして)ある」と自身の思いも打ち明けた。

 今後、ユーザーからの投稿を受け付けながら、大きな企画を毎年展開する予定という。なお万が一、ヤフーが今後100年存続しなかった場合には、「集まった情報を公共機関などに提供したい」としている。

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