MetaMoJiは6月18日、タブレットやモバイル端末を業務でさらに活用していくことを目的とした「GEMBA(ゲンバ)」アプリ基盤を開発したと発表した。
GEMBAアプリ基盤の上で作られた業務ソリューションの第1弾として、建設業界向けにデジタル野帳アプリ「eYACHO」を大林組と共同で開発した。iPadアプリのベータ版利用者を受付中だ。正式版は7月に提供予定。無料版をApp Storeで提供するほか、月額300円~の有料プラン、企業向けのチームプランを準備中だ。
MetaMoJiは、デジタルノートアプリ「MetaMoJi Note」や日本語手書き変換「mazec」などで知られる。企業向けには、社内用語や医療用語などそれぞれの用途にあった専門辞書を追加できるカスタマイズサービスを提供し、キーボード主体のPCでは困難だった顧客接客や建設・製造現場、商談支援、マーケティング調査、介護サービスなどで活用されている。
今回のeYACHOは、MetaMoJi Noteの技術をベースとして現場作業向けに必要な機能を追加したもの。GEMBAアプリ基盤は、MetaMoJi Noteの機能である手書きノート機能に加え、写真、表計算、日付の自動付与、業務テンプレート、文書内のタグ付けや集約機能などを持つ。
野帳(レベルブック)とは、屋外での利用に適した耐久性の高いメモ帳のことで、建設現場では備忘録や測量結果の記録、簡単な打合せのメモなどさまざまなシーンで利用されている。
大林組 グローバルICT推進室 技術課長の堀内英行氏は、実際に現場で活用している使い込んだ野帳を手に「屋外で利用するのに適した、耐久性の高いメモ帳。コンパクトなので胸ポケットに入れて即座にメモがとれるが、後からどこに書いたか探すのが大変なことがある。メモした内容を記録として正式に残さないといけない場合はPCで清書するなど、二重入力の問題がある」と問題点を語った。
それらを解決するために開発されたのが、今回のeYACHOだ。テンプレート、アイテム、タグを組み込むことで、従来の野帳の手軽さはそのままに、デジタルの特性である管理機能を大幅に向上させた。
例えば、ページを追加するとページの一番上に日付が自動で追加される。現場では、ページ数よりも日付のほうが重要になるからだ。写真を直接貼って手書きでメモを加えられる機能や、フォルダ分けをせずに野帳のように一冊のノートに記録し続けられるタグ機能。表計算機能、音声メモ機能など、大林組がリクエストした7つの機能をもとに作られている。
大林組では、2012年8月から12月にかけて国内外の建設現場で施工管理を行う技術職(所長を除く)全員にiPadを配布するなど、積極的に現場のワークスタイル変革に取り組んでいる。当時約3000台だったiPadは3年間でほぼ倍増し、現在は5300台にのぼるという。大林組の従業員数は約8800人で、今では2人に1人以上が活用している。
iPad向けの自社開発アプリ「GLYPHSHOTシリーズ」があり、仕上げ工事のチェックや品質管理システム、立ち会い検査システムなどに活用。一部のアプリはNECを通じて外販もしているという。
堀内氏は、「mazecなども活用しつつ、ニーズに合致したものがなかったので、社内開発をして活用している。これまでのアプリケーションは大半が定型業務の効率化を目的としたもの。非定型業務ができていなかった。そこで着目したのが、現場で使っている野帳のデジタル化だった」と説明した。
今後は、医薬品や不動産などの営業支援や接客業に向けたリアルタイムCRMのフロントエンド活用、さらに生産現場や取材現場向けにも提供していく方針だ。
また、今後のロードマップについて、秋にもiPhone版をリリースするほか、年内にAndroid版とWindows版を予定していることを明らかにした。
MetaMoJi 代表取締役専務の浮川初子氏は、「大林組で検証し、現場で使えると実証できてほっとしている。現場作業のデジタル化がうまくいけば、いままで現場以外でやっていた報告や作業指示など現場以外でやっていたことにもつなげられる。(複数人で共同作業できるノートアプリ)MetaMoJi Shareで培ってきた技術をeYACHOに取り入れて、チームでシェアしてもらうことも考えている。メモを書いたときにその場で迅速に報告ができたり作業指示を出したりできるようになれば、飛躍的に現場の作業が向上するのではないか」と今後の展開を語った。
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