当然、中高生などでも当たり前のようにコピペが行われている。中学1年女子A菜は、小学校高学年の頃から作文の課題はコピペで乗りこえてきた。「先生はコピペしてるなんて知らないから絶対に平気。仲がいい友だちもみんなコピペで済ませている」。コツは、あまりうまくない作文をコピーすることだという。「うますぎると私らしくないからばれるし、クラス代表とかにされてばれたら大変だから」。A菜はあえて誤字を入れるように工夫しているそうだ。「ブログなら書けるけど、作文なんて何書いていいかわからないし…」。A菜のそのような一見矛盾する言葉が印象的だった。
小中高校生用の「学校提出用に限り著作権フリー」という読書感想文コピペサイトがある。用意された感想文にはパスワードがかけられ、画像化されているため、単純に検索対象とはならない。「少しアレンジして、オリジナル(もどき)の読書感想文に作り替えることもOK」「パクリ・コピペがばれても自己責任」と書かれており、悪質と言えるだろう。このようなサイトが検索で簡単に見つかってしまうことは問題ではないだろうか。
前回、何でも検索する子ども達の話を紹介したが、彼らは分からないことがあるとその場で検索し、出てきた答えをそのまま鵜呑みにする。Wikipediaなどのページをざっと読み、理解した「つもり」になる。情報の真偽を検証することはないし、まして出てきた情報について改めて自分の頭で考えることはない。
小学6年男子B之介の情報源はWikipedia。NAVERまとめや2ちゃんねるなどのまとめページも読んでいるようだ。「都合が悪い事実は子どもから隠されている。ネットに書いてあることこそ真実」とB之介は言う。未成年犯罪者の名前など、通常メディアには出てこない情報もネットで検索して得ている。
B之介にあるのは、大人や既存メディアへの不信だ。しかし、世の中の真実はWikipediaなどで語り尽くせるものではない。ネットで得られる情報はあくまで一面的であり、真実は情報を受け取る側である人間の判断にもゆだねられる。
子ども達は、分からないことは何でも検索する。書き方を教わらないのに書かざるを得ない時、検索してコピペできるものが見つかったら、誘惑に流されないでいられるだろうか。単純にコピペしてしまうのは、正しい書き方が分からないからという可能性もあるのだ。
コピペしづらい課題を出す工夫も必要かもしれない。たとえば作文には「必ず自分の最近の経験を入れて書くこと」という条件を付ける。レポートにも「冒頭で結論と理由を箇条書きでまとめた上で本文を書くこと」などとするだけで、単純なコピペはしづらくなる。
大阪私立大文学部で、ユニークな課題が出されたことがある。独自の文章を一字一句たりとも付け加えず、10カ所以上の異なる出典を明記する、完全な「パクリ」のレポートを作成せよというものだ。学生からは「他人の文章を切り刻むことに罪悪感を覚えた」「もうコピペはこりごり」という感想が寄せられたという。パクリに真っ向から取り組むなら、このようなやり方もありだろう。
コピペがまかり通った経験があれば、今後も繰り返してしまう可能性が高い。教員や保護者は、子ども達にオリジナリティとは何か、真実とは何かを考えさせる機会を設けよう。新たなものを生み出すことには価値がある。そして、コピペは必ず他人に分かってしまい、それ相応の罰を受けるということを伝えていくべきだろう。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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