東京大学が主催する学生向けハッカソン「JPHACKS」の表彰式が12月20日に開催された。式では12月16~17日にハッカソンに参加した32チームから、審査で選ばれた上位9チームが開発したソフトウェアやロボット、ガジェットなどを発表した。審査は「新規性」「技術力」「完成度」「将来待望性」「UI/UX」を基準とした。
発表されたのは、朝起こしてくれるアーム型ロボット「TALTAL」と脳波を取得するセンサで精神状態が可視化できるアプリ「Heart cloud」、ボイスレコーダーの書き起こしができるアプリ「LetMeHear!」だ。続いて、自分の持ち物を管理でき、不用品をオークションや譲渡できるウェブサービス「Trunk」、名刺データ交換ガジェットの「spiritualAxsh」、体重の増減に連動するアバターの姿をAndorid端末で確認できるフィットネスアプリ「AndroidxHalth」、パワーポイント閲覧時にテキストでのインタラクション機能を加えられるソフト「Qurezentation」ほか、機械学習を用いた統計解析が容易にできるウェブサービス「Insight」、カメラから入力した光の配列を音に変換して“空間を知覚する”デバイス「Sight」が発表された。
この中で最優秀賞に輝いたのは会津大学2年の五十嵐清氏と、坂口勇太氏が開発したspiritualAxshだった。spiritualAxshはインテルの開発プラットフォーム「Edison」と「iBeacon」、静電気センサを組み合わせたガジェット。手に装着した状態で握手すると名刺などのデータをやり取りできる。名刺を交換するときに握手もできるとより親密になるのではないかとの考えから開発したという。
「あえてデジタルではなくアナログなコミュニケーションを誘発することで親密さを増す」というストーリーが一貫していたことや、実際に動くデバイスを開発した点、デモンストレーションで会場を沸かせた点などが評価された。運営から優勝特典として開発基金50万円が贈呈された。運営によるとハッカソンなどのイベントではプロダクトの継続的な開発が難しいため、基金でこれを補う狙いがある。
JPHACKSのテーマは、テクノロジを駆使して人々の生活を劇的に変える3年後の未来のプロダクトを開発することだった。開発テーマを広く設定し、ビジネスに寄りがちな企業主催のハッカソンに対し、学術や技術を中心に据え、教育としての側面を持たせたという。
運営の狙い通り、多様な技術をベースにしたプロダクトやサービスが開発された。一方、審査員からは「ビジネスとして考えているか」「ターゲットが不明瞭」「もうすでにその機能はある」など厳しい指摘もあった。
ハッカソンを主催した東京大学のグローバルリーダー育成プログラムを担当する國吉康夫教授は「学生だけのハッカソンだったが、きちんとデモができるアウトプットが2日で開発できた」とした一方、エンジニアだけで開発したチームが多く、ユーザー視点に欠けた点があったと評価した。
参加者からは、人々の生活を劇的に変えるプロダクトを作ることがJPHACKSのテーマだが、これまで大きなインパクトを与えた米国発のベンチャーは10~20年先の見据えて開発に取り組んでいるという指摘があった。JPHACKSが掲げる「3年後のスタンダードを作る」というテーマでは想定している未来が近すぎ、学校主催のハッカソンというよりビジネスコンテストになってしまっているのではないかという批判だ。
これに対し國吉教授は、基礎研究では10~20年先を見据えることが大事だが、現在はこれまでより技術革新の速度が上がっており、3年後にスタンダードを変えるようなスピード感で開発にも取り組むべきと回答した。また、ハッカソンは海外の大学では盛んであるとし、教育手段として有効であると強調。第2回のJPHACKSの開催を表明していた。
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