続いて、先進技術研究所の5G推進室 無線技術研究グループ 主任研究員である永田聡氏が、通信方式の標準化団体である「3GPP」における、ドコモの標準化に向けた取り組みについて説明した。
接続性の担保と、機器調達価格低減化のため進められている通信方式の標準化だが、ここでは基地局や端末を開発するベンダーの意見が非常に強く、キャリアが積極的に活動するケースは少ないとのこと。それゆえドコモとしては、キャリアの立場から標準化に取り組むことが大きな価値を持つと考え、3GPPでの標準化にも積極的に取り組んでいるという。
実際、ドコモは現在のLTEの仕組みを最初に提唱するなど、W-CDMAやLTEの標準化には大きく貢献しており、LTE関連の特許技術は世界で7番目、キャリアの中では世界で最も多く保有している企業となっている。また永田氏自身も、3GPPで最も多くの企業が参加する物理レイヤの仕様策定をする「RAN1」の議長を務めるなど、標準化に大きな影響を与える存在となっていることが分かる。
3GPPでは定期的に標準化仕様を策定しており、最近各キャリアが導入しているLTE-Advancedは「Release 10」の仕様に基づいたものとなっている。現在は「Release 13」の標準化に関する議論が進められているが、中でも最も注目を集めているのが「LAA(Licenced Assist Access with LTE)」であるという。
これは、現在Wi-Fiなどで多く利用されている5GHz帯などの、免許不要で利用できる周波数帯でLTEを展開し、免許を獲得している周波数帯とキャリアアグリゲーションをすることで、高速化を実現する技術のこと。だがこのLAAを実現するには、既存のWi-Fiに影響を及ぼさないことが求められるほか、OTT事業者が免許不要の帯域でLTE通信を展開してしまう懸念などもあることから、LTEを支持する陣営と、Wi-Fiを支持する陣営との間で駆け引きが続けられているとのことだ。
また、これから議論が本格化する5Gに関して、ドコモが提案しているのが下り非直交無線アクセス技術(NOMA)だと、永田氏は話す。これは、LTEで用いられている変調方式のOFDMA(直交周波数分割多重アクセス)を改良したもの。信号を周波数領域だけでなく電力の領域にも分割し、基地局から遠くにいる端末に対して電力を多く割り当てることで、どの位置にある端末向けの信号かを識別しやすくし、効率を高める仕組み。NOMAは2016年3月以降に5Gへ取り入れるかどうか判断するとのことで、ドコモでは現在論文の投稿や実験などを進めながら、採用に向けた動きを進めているのだという。
なお5Gの標準化に関する今後の予定は、9月に米国で開催される5Gのワークショップで議論が開始され、2016年から具体的な議論が始まるとのこと。ドコモとしては2020年の商用化に向け、2016から標準化作業が進められる「Release 14」で5Gの基礎技術を取り込み、入りきらなかった余剰分や拡張部分を、次の「Release 15」で仕様化したいとした。
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