データ量「1000倍」時代に向け“5G”を構築--ドコモの通信戦略

 モバイルやワイヤレスに関する展示会イベント「ワイヤレスジャパン2014」。初日となる5月28日には、NTTドコモの取締役常務執行役員 ネットワーク担当 ネットワーク部長である徳広清志氏が、「移動通信の将来像とドコモのネットワーク戦略」と題した基調講演を実施。現在のモバイルネットワークを取り巻く状況と、ドコモのネットワークへの取り組みについて語った。

3Gに匹敵する規模のLTEネットワークを実現

 徳広氏はまず、現在のモバイルネットワークの動向について説明。フィーチャーフォンからスマートフォンへと端末のトレンドが大きく変化し、現在ではスマートフォン普及率が50%近くにまで達したことで、従来と比べ10~20倍にトラフィックが増加したと話す。

  • NTTドコモの徳広氏

 その影響を、徳広氏は2012年に起きたドコモの通信障害を絡めて言及。動画などの視聴により通信データが増加することは予測できたが、制御信号の増加によってネットワークがパンクするなど、従来の音声通話ベースで設計してきたネットワークでは対応するのが難しい変化が起きており、地道にキャパシティを上げる努力を進めているとした。

 徳広氏は「ネットワークを預かる立場からすると、ネットワークがパンクすることはホラーストーリー」と話す。さらに続けて「ネットワークは生き物。設備投資を怠ると、トラフィックが増えて渋滞がそこらじゅうで起きてしまう。それを見越してあらかじめ設備を増強するのが我々の仕事」と、増え続けるトラフィックに対してインフラ整備を続けることの重要性を説いた。

 続いて徳広氏は、ドコモの現在のネットワークに関する取り組みを説明。同社では2GHz帯と800MHz帯を用いてエリアの「広さ」を、1.5GHz帯と1.7GHz帯を用いて下り最大100Mbps超の「スピード」を実現するなど、4つの周波数帯を2つに分けて、ハイブリッドな形での活用をしているという。LTEの設備投資に関しても、2013年度には3878億円を投資して基地局を5万5300局まで増やしたが、2014年度には4650億に増額し、基地局数も9万5000局まで増やす予定。これにより、LTEのネットワークが現在の3Gに匹敵する規模を実現できるようになるとのことだ。

 エリアカバーに関しても、徳広氏は「ポイントで手を抜くと競争に負けてしまう。バジェット(予算)が許す限り、エリアを広げるのが原則だ」と話しており、トラフィックの多い都市部では6セクタ基地局、地方では広いエリアをカバーするオムニ基地局を用いるなど、環境に応じた展開を実施しているとのこと。特に電車が多い東京では、複数の電車が乗り入れることで一時的に膨大なトラフィックが発生することから、さまざまなチューニングを実施して対応に当たっているという。100Mbps以上の高速通信ができるエリアも、2014年度末には4万基地局にまで整備を広げるとしている。

  • スマートフォンの普及でトラフィックは増大の一途にあるという

  • ドコモは4つの周波数帯を活用してエリアと速度を両立

  • LTE基地局数は2014年度末で3Gに匹敵する規模にまで拡大するとのこと

 さらに、徳広氏は新サービスの「VoLTE」にも言及。高音質で通話ができる、発着信が早くなるなどの特長を解説し、「6月下旬にはVoLTEの音が、新しい端末同士から聞こえるようになる。それまで楽しみにして欲しい」と述べた。

2020年の通信環境に対応する5Gの技術

 続いて徳広氏は、今後のドコモの取り組みについて説明。早ければ東京五輪が開催される2020年には、2010年から比べて1000倍のトラフィックが発生する可能性があるとしており、それに対応できるようネットワーク技術も進化しなければならない。

 その進化の1つが、ドコモが導入を予定している、第4世代の通信方式「LTE-Advanced」だ。徳広氏は複数の周波数を束ねる「キャリアアグリゲーション」や、マクロセル内にスモールセルを設置し、3.5GHz帯の高い周波数を用いたマクロセルと連携して容量を拡大する「ヘテロジーニアスネットワーク」など、LTE-Advancedの要素技術について説明。そうした技術を用いることで、2014年度中に下り最大225Mbpsの通信速度を実現するサービスを開始できると徳広氏は話す。

 ただし、1000倍のトラフィックに対処するには、さらにその先の技術となる第5世代(5G)の導入が不可欠になるとも話す。5Gの技術に関してはこれから議論が進められる段階だが、「日本が世界の標準を引っ張る役割を担わないといけない」と徳広氏は話す。5Gでは、現在より高い周波数を用い、基地局も小型化して、周波数の利用効率を高める必要があるとのこと。現在ドコモでは、世界の主要ベンダーと5Gの開発に関する実験を進めているという。

  • 早ければ2020年には、トラフィックが2010年の1000倍に達すると予測

  • 5Gには高周波数や基地局の高密度化、周波数利用効率の向上などが求められる

  • ハードとソフトを分離できるコアネットワークの仮想化も、5Gの実現には重要なテーマとなる

 さらに5Gを実現する上ではコアネットワークの進化も求められ、オールIP化の次にネットワークの仮想化が必要になってくるとしている。従来、専用のハードとソフトを用いて実現していたネットワーク機器を、汎用のハードによる物理層と、仮想化ハイウェイと機能ソフトウェアによる上下分離をすることで、ハードウェアが壊れても上位レイヤーでサポートできるなどのメリットが生まれるとのこと。こちらも世界の主要ベンダー3社とネットワーク仮想化の実証実験を実施しており、シミュレーター上では1000倍のトラフィックを対処するための目途が立っているとのことだ。

 最後に徳広氏は、「2020年の東京五輪に向け、世界最高水準のサービスを提供する」と、今後のネットワークに関する意気込みを述べ、講演を締めくくった。

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