広告主からの収益獲得を目指すVerizon Communicationsは、AOLとそのデジタルコンテンツを傘下に収める計画だ。
Verizonは米国時間5月12日、AOLを1株あたり50ドル、総額44億ドルで買収することで合意したと発表した。10年以上前のドットコムバブル期に絶頂を極めたAOLは、現在のオンライントレンドセッターらの間では過去の反省例のような存在になっているが、一連のウェブメディアに加えて、ビデオ関連技術も保有している。
買収の背景には、ビデオ事業を拡充するとともに、自社が得意とするモバイル事業に融合したいというVerizonの思惑がある。米国最大のモバイル事業者であるVerizon Wirelessを傘下に擁する同社は、ビデオサービスの拡充を図っており、インターネット接続と電話サービスとともに有料TVサービスを提供する「Fios」だけでなく、インターネットを介した新しい形態のビデオサービスも推進している。
Verizonは、従来のケーブル、衛星、または放送ネットワークではなくインターネットを介して配信される、いわゆる「オーバーザトップ」(OTT)ビデオを事業として確立しようと取り組んでいる。「モバイルファースト」のプラットフォームを提供し、AOLのコンテンツを同社のLTEワイヤレスネットワークを介して消費者に提供する計画だと同社は述べだ。
Verizonは、AOL買収により、The Huffington Post、TechCrunch、AOL.comなどのコンテンツプロバイダーに加えて、オリジナルのビデオコンテンツと広告プラットフォームを手に入れることになる。
Verizonの最高経営責任者(CEO)を務めるLowell McAdam氏は、「グローバルでマルチスクリーンのネットワークプラットフォームに基づく卓越したデジタル体験を顧客に届けることが、Verizonのビジョンである」と述べた。「この買収は、その優れた顧客体験を実現する、スクリーンに依存しない接続を消費者、クリエイター、広告主に提供するという、われわれの戦略を支えるものになる」(McAdam氏)
調査会社eMarketerによると、2014年の世界デジタル広告市場の規模は1450億ドルで、AOLのシェアは1%未満と、同市場を主導するGoogle(31%)とFacebook(8%)とは大きく引き離されているという。米国のみでは、AOLのシェアは2%強だった。
一方、世界モバイル広告市場は、2014年の426億ドルから2015年には687億ドルにまで規模を拡大する見込みだと、eMarketerは述べている。
AOLは1983年、Control Video Corp.(CVC)という社名で創業した。同社は、ゲーム機「Atari 2600」向けに「GameLine」というオンラインサービスを運営していた。1980年代の苦しい時代を経て、CVCは1991年、America Onlineに社名を変更した。
規制当局による承認が得られれば、AOLはVerizonの完全子会社となり、CEOのTim Armstrong氏が引き続きAOLを統括する予定。Verizonは、2015年夏の買収完了を見込んでいる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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