「リアル脱出ゲーム」をシンガポールで開催 -- Vivid Creations代表・齋藤真帆さん

 この連載では、シンガポール在住の筆者が、日本から東南アジアに拠点を移し、テクノロジ企業で働く女性を紹介していきます。赴任、転職、起業などさまざまなきっかけで新たなキャリアの一歩を踏み出した彼女たちに、仕事の奮闘や自身の将来、海外で暮らすことなどについて聞きます。

 今回紹介するのは、シンガポールに進出する日系企業のプロモーションを支援する「Vivid Creations」の代表 齋藤真帆さん。2015年6月には、日本で人気の体験型謎解きゲーム「リアル脱出ゲーム」をシンガポールで開催する予定。その狙いや、起業からこれまでの歩みについて聞きました。


「Vivid Creations」の代表 齋藤真帆さん

――6月開催の「リアル脱出ゲーム」はどのようなイベントになりそうでしょうか。

 日本の発案者であるSCRAPと共同で、6月6日から28日までの毎週土・日曜日に、「リアル脱出ゲーム」の第9弾にあたる「Real Escape Game in Singapore」を開催します。今年2月には、第8弾「LAST GARDEN / SAVE NATURE, SAVE HUMANITY」を同国随一のランドマークである「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」にて開催しましたが、今回の「Real Escape Game in Singapore」は会場をシンガポール全島に広げます。

 1カ月を通して参加人数は3500人を見込んでおり、同国に数多く存在するさまざまな体験型ゲームコンテンツの中でも最大規模の参加者数となる予定です。在シンガポール日系企業では初となる、シンガポール政府観光局の「キックスタート基金」の助成金を受けての開催となります。この基金は、同国の観光産業に関わる革新的なライフスタイルコンセプトやイベントを対象としたものです。


今年2月に開催されたリアル脱出ゲーム第8弾の様子

――今回のリアル脱出ゲームでは、参加者にどのようなお題が与えられるのでしょう。

 リアル脱出ゲームは、参加者がイベントに仕掛けられた謎やパズルなどを解き進め、すべての謎を明らかにすることで設定されたシチュエーションからの脱出を試みるものです。

 今回の設定は、「参加者はシンガポールの機密組織の一員で、建国50周年を迎える平和で安定したシンガポールを乗っ取ろうとする秘密組織のアジトを突き止め、陰謀を暴く任が与えられた」というもの。仕掛けを通じて組織に関する情報を集め、「組織に握られた国の中枢情報を奪還する」というストーリーです。

――日本で実施されるリアル脱出ゲームとの違いは。

 日本のリアル脱出ゲームは、参加者は紙とキットだけを渡され、それを使って仕掛けを解き進めていく非常にシンプルなもの。参加者は自分たちの想像力を働かせるプロセスを楽しんでいるので、賞品など競争を演出する要素はありません。

 この日本の演出について、地元の人を対象にグループインタビューを実施したところ、「賞品がないのに、なぜ日本人は参加するのか」という声が多く聞かれました。シンガポールの参加者の方が、解決できたという成果がちゃんと見えることを求めているんですね。彼らの声を踏まえて今回は賞品を用意します。

 また、参加者のビジュアルに訴えかける装飾など雰囲気作りのための演出も、やはりキャッチーなものが好まれるので、日本よりも手厚く実施する予定です。

――リアル脱出ゲームをシンガポールで開催する背景は。

 Vivid Creationsを設立した理由でもありますが、日本のユニークな文化やコンテンツをシンガポールなど東南アジアの国々に届けたいという思いがありました。またSCRAPがイベントの海外進出を検討していたタイミングとも重なりました。

 私は2006年に海外転職でシンガポールに来ました。この国を選んだのは多国籍文化に刺激を受けたからです。それまでは日本の出版社でイベントやプロモーションの仕事をしておりまして、その頃の経験を活かして、シンガポールの音楽フェスティバルに日本人アーティストを紹介する仕事にフリーランスとして携わっていました。

 音楽フェスティバル以外にも、日本人落語家が出演するイベントの企画やスポンサー集めの仕事をしているうちに、企業の商品発表会の運営など幅広い案件も手がけるようになり、2009年に会社を設立しました。


Vivid Creationsのオフィス風景

――東南アジアでプロモーションをしたい日系企業が抱える課題は。

 シンガポールをはじめ東南アジアに進出する日系企業が増えている一方で、特に飲食、アパレル業界などでは撤退する企業も最近では増えています。進出に失敗する企業に共通するのは、地元の消費者の声をすべて拾いきれていないことでしょうか。

 ある日系企業のキャラクターがプリントされたリュックをシンガポール人の保護者に見せた際、「日本製は丈夫でいいけど、買えない」と言っていました。なぜなら、「シンガポールの学校は教科書が多いので、日本の大きさでは入らないから」だと。香港では、日系企業の鉛筆をある保護者に見せたときに、「鉛筆はそもそも買わない。学校で支給されるから」と言っていました。

 シンガポールや香港は、東南アジアや中国市場に進出するためのテストマーケティングの場として適していますので、それを支援する現地のパートナーになれたらと考えています。そのために、今年の2月に東京にも支社を開設しました。


久しぶりの東京での生活にまだ慣れないそうだ

――御社の今後の展望は。

 イベント実施を担う会社としてだけではなく、シンガポールを中心とした東南アジアにおけるコミュニケーションをデザインする会社になりたいと考えています。日本の営業所がうまく機能すれば、東南アジアの他の国にも拠点を構えたいです。

 そのために、社内でグローバル人材を育てたり、新たなメンバーにも参画してもらう必要があります。私の考えるグローバル人材とは、英語が話せたり、海外留学の経験がある人のことだけでなく、柔軟で、常に変化を楽しめる、ガッツのある人のこと。

 日本の若い方は、海外に出たい人とそうでない人で二極化していると聞きます。全員でなくてもよいと思うのですが、海外に出たいと思っている方、特に私と同じ女性の方には、ぜひ世界に飛び出してみてほしいと思います。

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