ユーザー登録数1000万件を誇る動画配信サービス「ツイキャス」を運営するモイは4月22日、チケットEC事業に参入した。配信者は、ツイキャスの自身の配信画面でイベントやライブの電子チケットを販売できる。同社ではミュージシャンなどを中心とした利用を見込んでおり、流通総額を年間数十億円の規模にまで広げるのが目標という。
チケットはツイキャス上に開設した「キャスマーケット」で取り扱う。住所や銀行口座を入力してキャスマーケットに登録することで、モイにチケットを委託して販売できる。モイはチケットの内容を審査して安全性を高める。
チケット購入者はモイの口座に代金を振り込み、モイは毎月2回、依頼主の口座に販売手数料を差し引いた代金を振り込む。販売手数料は、ライブ動画配信中とその後1時間以内は当面無料とし、それ以外は8%。振込手数料は無料。万が一イベントが中止になった場合などは返金するという。
当初はユーザーを限定して提供し、その後全ユーザーに解放する。モイによれば、Jリーグの浦和レッドダイヤモンズがホームゲーム自由席チケットを販売する予定などがあるという。
この機能により新たに生まれるコミュニケーションがある。ライブ配信中に視聴者がチケットを購入した場合、配信画面に「購入」を伝えるメッセージが表示されるため、配信者はその場で反応できる。「ライブ配信をしながらチケットを売るのはユーザーにとってイメージがわきにくく、“文化”として定着するのに時間がかかるかもしれない。チャレンジングな取り組みだが、新たな購買体験を提供できることを楽しみにしている」(担当者)。
ユーザーのチケット売買を可能にする一方で、モイはツイキャス公式キャラクターの人形やクッションなどを試験的に販売する。在庫管理などECのノウハウを蓄積するための取り組みで、将来的にはユーザーがグッズなどを販売できるようにしたい考えだ。
モイは新機能の今後の可能性を示すこれまでの事例として、(1)ツイキャス配信中にライブのチケット予約用番号を映して配信後に電話を受け付けたところ、100枚以上のチケットが購入された、(2)配信の中で著名モデルが普段使っている化粧品を紹介したところ、翌日にその商品がECサイトで在庫切れになった、(3)iTunesで楽曲をリリースするタイミングでツイキャス配信をしたところ、リアルタイムにランキングが上昇し、最終的に1位になった――などを挙げている。
ライブ動画配信サービスを巡っては、Twitterが3月に「Periscope」を買収し、競合する「Meerkat」によるTwitterへのアクセスを制限する措置をとった。これについてモイでは「リスクがないわけではない」としながらも、2014年12月に始めた独自アカウントにより「1つのプラットフォーム(Twitter)に依存しないものになってきている」と成長を明かした。
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