業界の起業家、イノベーター、ベンチャーキャピタリストらが集い、最新のビジネストレンドを披露するカンファレンス「新経済サミット2015」が4月7~8日の2日間の日程で開催された。2日目、「シリコンバレーとスタンフォード大学の秘密 大学から生まれるイノベーション」と題されたセッションでは、スタンフォード大学の研究員や、スタンフォード卒でシリコンバレーに拠点を構えるベンチャーキャピタリスト、アントレプレナーらが登壇し、多くのスタートアップやイノベーションがそこから生まれる理由と、日本が追いつくにはどうすればいいのか、さまざまな視点の意見が飛び交った。
登壇者として招かれたのは、スタンフォード大学在学中にベンチャーキャピタルFLOODGATEを創業したアン・ミウラ・コー氏と、スタンフォード大学 アジア太平洋研究所の櫛田健児氏、ECサイトからのメールを解析して購入履歴を集約するサービスを提供しているSliceのCOOなどを務めるハービンダー・シン氏の3人。モデレーターはソースネクストの代表取締役社長である松田憲幸氏が務めた。
シリコンバレーはご存じの通り、世界規模のIT企業が集う米カリフォルニア州サンフランシスコ一帯にあるエリアの通称だ。このエリアでは大企業だけでなく、スタートアップ企業も毎年数千件立ち上がっており、そのうち300件ほどがなんらかの形でイグジットし、さらにその中の10~15件のイグジットは10億ドル以上の規模を達成しているとのことで、世界で最もスタートアップ熱の高い地域でもある。
なぜここまでスタートアップの数が多いのか。FLOODGATEのアン・ミウラ・コー氏は、シリコンバレーにおけるスタートアップのほとんどがスタンフォード大学と関係のある企業であり、その理由は大学自体にスタートアップの育成を目的とした豊富な講座があるなど、充実した環境が整いっているからだと語る。
30ほどあるという講座は学部に関わらず学ぶことができ、「大勢のベンチャーキャピタリスト、起業家などがメンターとして学生を指導」している。単に講座があるだけでなく、特別な「スタートアッププログラム」も用意。選抜された学生がビジネスの運営方法を学び、スタートアップ企業にインターンシップとして加わる、トータルで9カ月間に及ぶプログラムもある。インターンシップの間はベンチャーキャピタリストや企業幹部などがメンターとして付き、サポートしてくれるのだという。
こうした活動が、スタンフォードの学生が卒業後、そのままシリコンバレーやサンフランシスコ近郊にとどまり、スタートアップを立ち上げたり、シリコンバレーの他の企業に就職したりする理由ともなっているとアン氏。Sliceのハーピンダー・シン氏も「スタンフォードはイノベーションが生まれる場所、という意味のタイトルになっているが、これは言い過ぎかもしれない」と断り、「一方通行ではない」と主張する。アン氏が言うように、スタンフォードとシリコンバレーの企業は互いに交流があり、産学連携などを通じて、スタンフォードが業界で起こっていることを学んできたことが重要なのだと話した。
また、スタンフォードが他と違うのは「IntelやCiscoのCEOのような人物が講義してくれる」ところにもあるとハーピンダー氏。「毎日3、4人の伝説的な人物が来て教えてくれる。これが2年間続くことを想像してほしい」と、スタンフォードの刺激的な学生生活の一端を披露した。
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