「Fitbit」に学ぶ、スタートアップの資金調達と特許出願のタイミング

大谷 寛(弁理士)2015年04月16日 07時30分

 Apple Watchも正式に発表され、注目を集めるウェアラブルデバイス。さまざまな新しい体験が期待されていますが、そのうちの1つが「ヘルスケア」。Apple Watchでも大きく取り上げられています。


 ヘルスケア×ITの分野は近年競争が激しくなっています。Apple Watchの発表を前に2014年末、この分野のスタートアップの代表格であり、2015年のIPO有力株とされるフィットビットの活動量計がアップルストアから撤去されたことは象徴的です。

 2007年5月創業のフィットビットは、昨年秋に米国で「Fitbit Charge(チャージ)」「Fitbit Charge HR(チャージHR)」「Fitbit Surge(サージ)」を発売し、プロダクトラインアップを充実させています。「Fitbit Zip(ジップ)」「Fitbit One(ワン)」「Fitbit Flex(フレックス)」までは日本でも発売しており、今春にはチャージなども入手可能になります。


 これまでの歩数計のイメージを覆し、ユーザーがより活発で、より健康的な日々を過ごせるように工夫が凝らされたこうしたウェアラブルデバイスは、今後一層、競争が激化することが予測されますが、実は各社大きく発表はしないものの、知財の戦いもすでに始まっています。

 スマートフォンでサムスンと世界中で特許訴訟を繰り広げたアップルがウェアラブルデバイスでも特許出願に取り組んでいることは想像ができますね。

 では、フィットビットはどうでしょうか。すでに数十億円の資金調達をしているとはいえ、スタートアップが本格的な特許戦略を持っているイメージはあまりないでしょう。しかし、米国中心ですが、特許出願の情報が一般に公開されている2013年9月末までの時点で31件にのぼる出願がされています。しかも、Apple Watchに搭載予定の機能と重なる点もあり、プロダクトと知財の両面で激突する可能性が十分にあります。

フィットビットの特許出願の内容は?

 1件目の特許出願は、2011年6月8日の米国特許出願第13/246843号です。加速度センサに加えて高度センサを用いて、歩数だけでなく、階段昇降段数、消費カロリなどの活動量を算出する技術や、算出結果の表示技術が詳細に開示されています。

 特許出願は申請手続きの完了日を基準として、世界中で新しいかどうかが問われますが、この出願、早い出願日を確保するための米国制度上の手続きが2010年9月30日と同年10月7日になされていて、9月10日に行われたベンチャーキャピタル(VC)からの900万ドルの資金調達の直後に対応していたことになります。

 資金調達に着目してみると、次は2012年1月24日に1200万ドルが出資されています。ここでは逆に、資金調達の直前の数カ月に2件目から5件目までの特許が出願されています。1件目の関連出願のほか、2012年4月発売のスマート体重計「Fitbit Aria(アリア)」についての技術が対象となっています(米国特許出願第13/346275号)。

 その後、1件目の関連出願がさらに6件され、2013年8月13日に行われた4300万ドルの資金調達の直前半年の時期には、16件の特許出願が追加されています。


(US Pat. App. No. 13/769,241)

 活動量計とスマートフォンなどとのワイヤレス同期技術に関するもの(米国特許出願第13/769241号)、LED光を使った心拍(HR)センサに関するもの(米国特許出願第13/924784号)、GPSなどのロケーションデータの活動量計へのさまざまな応用に関するもの(米国特許出願第13/959681号など)などがあります。

 最後に、資金調達の翌月の9月にはさらに4件の特許が出願されています。

 次のグラフは今ご説明した内容をまとめて示しています。左側の縦軸が資金調達、右側の縦軸が出願件数になります。「薄い青枠」が資金調達の直後、「濃い青枠」が資金調達の直前の特許出願です。


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