大企業だけじゃない、スタートアップに「特許」が必要なワケ

大谷 寛(弁理士)2015年02月05日 11時00分

 みなさんが最近「特許」という言葉を目にしたのはいつでしょうか。

 トヨタがテスラに続いて特許を無償開放したというニュースや、少し前では、アップルとサムスンがスマートフォンを巡って世界中で特許訴訟を繰り広げたことなどが記憶にある方も多いと思います。

 特許は大企業のもの。スタートアップには無縁のもの。そういったイメージがあるとしたら、今成功しているスタートアップが創業期から特許に取り組んでいるケースが少なくないことを新鮮に感じられるかもしれませんね。

  • (US Pat. No. 8,534,546)

 「Uber」の最初の特許出願は、配車アプリについてのもので、2009年12月にされています。サービスがローンチされたのは翌年6月のサンフランシスコですので、開発中から取り組んでいたことになります。「Square」は、2009年10月には複数の特許出願をしています。そして、クレジットカードリーダーの出荷は翌年5月からです。

 少し時間を遡ると、1994年創業の「Amazon.com」もそうです。ジェフ・ベゾスがウェブサイトのベータ版のURLを友人、家族などに知らせたのは1995年春と言われていますが、3月にはオンライン決済の安全性を高める技術について最初の特許出願をしています。

 どうしてこれらのスタートアップは、創業期の人も時間もお金も足りない時期に特許にリソースを割いているのでしょうか。そもそも特許って何なのでしょうか。

 実は「特許」という言葉は、法律上はもちろん意味があるのですが、分かりづらいところがありますし、特許制度を活用する方々にとっては、あまり適切な言葉でもありません。むしろ、「発明」「特許出願」「特許権」という3つの言葉が大切になります。何かを解決するための新しい視点が「発明」です。その「発明」を、国に申請する手続が「特許出願」です。国の審査を受けて通過すると、「特許権」が与えられます。


 この「特許権」というものが、みなさんが「特許」と聞いたときにイメージされることの多いものです。あなたが「特許権」を保有しているということは、あなたの「発明」を他の人が利用するときにはあなたの許可を得てからにして下さいね、という決まりを国が定めたということを意味します。あなたの許可がなければ同じことはできない、これが「特許権」の威力です。

スタートアップが特許を取るメリットは?

 「特許権」がこういうものだとすると、スタートアップにとってのメリットも見えてこないでしょうか。

 あなたがスタートアップの創業チームのメンバーであるとしましょう。製品・サービスの開発に日夜打ち込むとともに、それを多くの人に知ってもらい、使ってもらえるように、いろいろな場所に足を運んで自社のプロダクトの素晴らしいところを説明すると思います。特に業務提携、資金調達のためにピッチイベントへの参加、個別の事業説明などが大切になります。

 残念なことですが、しばらくするとそうして説明したプロダクトの重要な部分が模倣されて、他社にシェアを奪われてしまったという例が実際に生じています。もちろん万能ではありませんが、「あなたの許可がなければ同じことはできない」権利である特許権が成立する可能性があれば、他社も模倣には慎重になりますので、そのための特許出願をしておくことで外部での事業説明を比較的安心して行えます。

 他にも特許(特許出願・特許権)のメリットはありますが、最初にスタートアップが実感できるのはこの点でしょうね。他社も参入して市場が盛り上がらなければ自社も成長できないという側面もあって、難しいところではあります。しかし、差別化すべきところをしっかりと守ることは必要で、特許出願が役割を果たすことができる部分です。

 特許(特許出願・特許権)への取り組みは、時間もお金もかかります。特許出願には1カ月、数十万円、特許権の取得まで進むと早くて半年、百万円程度(日本のみ)となります。ですが、上手く使うことで、時間とお金の投資以上に成長を加速してくれるからこそ、最初に紹介したようなスタートアップは特許への取り組みに積極的なのです。


(http://www.amazon.co.jp/)

 特許権を取得できる「発明」とはどういうものまで可能なのか、ここでは詳しく説明できませんでしたが、おそらくみなさんがイメージされている以上に広く、多様です。たとえば、アマゾンで買い物をするときの1-ClickはAmazon.comの特許権です。特許を取れるような画期的なテクノロジーではないと最初から思ってしまう方が少なくないのですが、意外に使える可能性があります。創業期にはぜひ一度、特許制度を活用できないか少し時間を割いてみてください。

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