3月9日、デジタルハリウッド大学大学院駿河台キャンパスにて「エンタテインメントの未来を考える会 黒川塾(二十四)」と題したトークセッションが行われた。コラムニストの黒川文雄氏が主宰、エンターテインメントの原点を見つめなおし、ポジティブに未来を考える会となっている。
今回はゲーム系メディアの編集に携わる3名が登壇して、2014年のエンターテインメントのトピックを振り返りつつ、あくまで勝手賞という位置づけながら、エンターテインメントの未来を考える大賞を決めるというテーマのもとに実施した。ちなみに2012年は「パズル&ドラゴンズ」などを制作したガンホー・オンラインエンターテインメント、2013年はPS4とニンテンドー3DS用ソフト「ソリティ馬」を選出。今回で3回目となる。
登壇したのはKADOKAWA エンターブレインブランドカンパニー 週刊ファミ通編集長の林克彦氏、KADOKAWA アスキー・メディアワークスブランドカンパニー 電撃プレイステーション編集長の西岡美道氏、朝日インタラクティブ CNET Japan編集記者の佐藤和也の3名。
冒頭では、米国にて行われたGame Developers Conference 2015(GDC2015)について触れ、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が開発を進めているPS4用VRシステム「Project Morpheus」をはじめとしたVR(バーチャルリアリティ)が話題となった。
昨今盛り上がりを見せているVR界わい。林氏も専門学校での講演において、質問で出てくる話題のほぼ100%がVRは今後どうなっていくのかといったものだったと振り返る。「高校生の方からでも質問が出てくるというあたり、エンドユーザーにも注目されていることを感じた」(林氏)という。
ことVRでは、ゲーム以外に広がる可能性を示唆したのが西岡氏。現状でもVRに興味を持っている開発者というのは、VRが好きな人たちととらえているという。そんななかでもバンダイナムコゲームスの原田勝弘氏が手がけた「サマーレッスン」は、ゲームメーカーでもVRに取り組んでいることをアピールする上で業界に与える影響も大きかったという。また発売時期が2016年前半を目標とすることが公表されたが、これによってクリエイターやメーカーもその時期を意識して動けるような状況になったという。またテンションは高くあるものの、あとはビジネスとして成り立つかどうかがポイントだという。
その点で3人の意見が一致したのが、実際に体験してみないとすごさが伝わらないというところ。筆者の意見となるが、1年前にもVRシステム「Oculus Rift」が話題に挙がったものの、当時は体験していなかったがためにピンとこなかった。その後Oculus RiftやProject Morpheusのコンテンツを体験した経験をもって、そのすごさを実感できたところがある。もちろん市販されていない段階での興味を喚起することは限られるものの、それをイメージできるかどうか、一般を巻き込む施策がとれるかどうかが鍵になってくると思われる。その観点ではサマーレッスンであったり、ほかにもアニメ作品などを360度映像で見られるといった、身近な題材ですごそうなものであるとイメージしやすいものがとっかかりとして必要ではないかと語った。
林氏は、今回のGDC2015は日本人の登壇者が少なかったとコメントしたことから、黒川氏が世界において日本のコンテンツの注目度について質問が投げかけられた。林氏と西岡氏ともに、まず海外ではメーカーよりも、クリエイター個人や開発スタジオに対して注目が集まっていることを説明。メタルギアシリーズを手がけ、最新作「METAL GEAR SOLID V:THE PHANTOM PAIN」の発売を控えているコナミデジタルエンタテインメントの小島秀夫氏や「Bloodborne」のディレクターであるフロム・ソフトウェアの宮崎英高氏、SCEワールドワイドスタジオのプレジデントである吉田修平氏などは、登壇するだけでスタンディングオベーションで迎えられるという。
その一方で、タイトルとしての総量や厚みがもっとほしい林氏は指摘。このあたりは、日本におけるスマートフォン向けゲーム市場が世界から注目されるほど大きくなり、逆にコンシューマゲーム、特に海外では主要なハイエンドな据え置き機の市場とは差があることから、今は存在が薄く見えるのではと筆者が語った。ことスマートフォン向けゲーム開発にコンシューマゲームメーカーもラインをさいていおり、市場規模やビジネスを考えれば今は仕方がない状況と西岡氏は述べた。
ではこの先はどうなるのか。実際にPS4向けに開発のリソースをさけるのかと問うと、林氏は、メーカーによってスタンスは分かれていると話す。ことスマホゲームは相当なタイトルがリリースされていることや、ランキングの上位タイトルが動かない状況でなおかつ1タイトルをいかに長く遊ばせるかという運営勝負の世界であるため、新規タイトルが上位にいくことの難しい。そのため、むしろコンシューマで展開したほうが手堅い勝負ができると考えているメーカーもあるとし「スマホ1択ではない状況。半々から、あえてコンシューマの比率を増やしている開発やメーカーもある」という。
もっとも林氏は、日本ではPS3が現在も活況であるためマルチプラットフォームで発売される状況は仕方ないとしながらも、コアゲーマーはPS4を手にしている状況であると説明。日本でのファンが多いRPGタイトルなど、コアゲーマーとライトゲーマーの中間のユーザーがPS4に興味を持つようになるかが勝負だと話す。こと西岡氏も、2月と3月あたりはかなりラインアップもそろってきており、なおかつBloodborneのようなPS4限定のソフトが出てくる状況もあるとし、そういったラインアップの拡充を続けていくしかないと語った。
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