100円硬貨以外の料金設定は急務--KONAMIのゲーム系電子マネーPASELIが目指すところ

佐藤和也 (編集部)2015年03月19日 08時30分
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 KONAMIは主にゲームセンター向けとして行っている電子マネーサービス「PASELI」について、利用に応じてPASELIポイントを付与する展開を3月下旬から開始するほか、自社タイトル以外のアーケードゲームや、アミューズメント施設以外の店舗の決済にも今後対応していく。

 PASELIは、KONAMIのアーケードゲームで使用できる電子マネーとして2009年にサービスを開始。サービス開始直後は数タイトルのみという状態だったが、現在は自社タイトル全てのアーケードゲームで決済が可能となっている。2月に行われたジャパンアミューズメントエキスポ2015(JAEPO2015)では、読み取り端末「PASELIリーダー」を出展し、自社ゲーム以外にも展開していくことを発表した。

  • JAEPO2015では、読み取り端末「PASELIリーダー」を出展

 そのJAEPO2015では各社から電子マネーサービスの取り組みが発表され、ゲームセンターにおける電子マネー決済の本格化をうかがわせた。アーケードゲーム業界における電子マネー化の必要性とPASELIが目指すところについて、株式会社コナミデジタルエンタテインメント常務取締役 第1制作本部 本部長の沖田勝典氏に聞いた。

 沖田氏は1990年に入社して以来、アーケード向けオンライン麻雀ゲーム「麻雀格闘倶楽部」の制作プロデューサーをはじめとして、一貫してアミューズメントマシン事業に携わり、現在は統括する立場で事業を推進している。

コナミデジタルエンタテインメント常務取締役 沖田勝典氏
コナミデジタルエンタテインメント常務取締役 第1制作本部 本部長 沖田勝典氏

100円硬貨に縛られているビジネスモデルの限界

--まず、PASELI導入のそもそもの経緯について教えてください。

沖田氏:一言で言ってしまえばゲームセンターにおける電子マネー化の推進です。なぜ電子マネー化が必要かという話になりますけれども、何十年と続いている1コイン100円のビジネスに限界があると感じています。100円硬貨に縛られている状況は制作するメーカーの立場としても、ゲームセンターの運営や経営を行うオペレーターにとっても難しいビジネスモデルです。価格設定における柔軟性が低く、あとは消費税対応ですね。消費税は8%まで上がっているにもかかわらず100円のままです。ゲームセンターはどこかのタイミングで電子マネー化しなければいけないと、かなり前から考えていました。

--100円硬貨が前提のビジネスモデルからなかなか脱却できない理由はどこにあると思いますか。

沖田氏:いろいろな理由が考えられますが、例えばかつてKONAMIでも100円セレクターと10円セレクターを併用して使用出来るゲーム機を作ったこともあります。でも運営する店舗に、新たに10円硬貨とその両替機の両方を用意してもらう必要があり、管理の手間も加わって負担が大きくなってしまい、うまくいきませんでした。

--振り返ると、電子マネーサービスを早期に取り入れ、遊んだ分だけの後払いのようなシステムの試みもありましたが、定着はしませんでした。

沖田氏:ほかにも、そのお店だけで使えるプリペイドカードを発行するハウスマネー制のシステムを導入する試みを行った店舗もありましたが、これもなかなか定着していない。その理由について聞いてみましたが、ただ料金をチャージしてその分遊ぶのではお客様がメリットを感じないということでした。逆に考えるとお客様がメリットを感じるようにより面白く、よりお得になるという感覚を提供して電子マネーを使う動機付けをし、いろいろなところで使えるという利便性が高まれば活用してもらえると感じています。

--自社で電子マネーサービスを展開しようとした経緯や理由を教えてください。

沖田氏:アーケードゲームでのオンライン接続サービスとして「e-AMUSEMENT」というのを導入した2005年頃から、電子マネー化を検討していました。その時点から100円硬貨のビジネスモデルには限界があると感じていたので。今でこそ電子マネーが一般的になっていますが当時はそうではなく、そのときに電子マネー化を一気に押し進めるのは難易度が高いと感じました。

 電子マネーサービスを検討するなかで、ほかの電子マネーサービスを活用する案もありましたが、僕らが実現したいと思っていることができないと感じたので、自ら電子マネーサービスに乗り出した形ですね。

--実現したいこと、というのを、もう少し詳しく教えてください。

沖田氏:まず、店舗個別でインフラや端末設置などの設備投資代が発生すると、オペレーターにとって負担が大きいということが一点です。e-AMUSEMENTの展開も進んでいたのでインフラはありますし、ゲーム筐体にもICカードのリーダライタが備わっているので、それらを活用してこちら側の制作だけで進められるというのは大きかったです。

 もう一点は、利用者のデータをビッグデータとして保有、分析できることです。それを活用してゲーム制作につなげると共に、オペレーターにも還元するという流れを作ることです。ほかの電子マネーサービスを使ったときに利用者動向のデータがどのように提供されるのかはわかりませんが、自前で持っていたほうが融通が利くのは間違いないでしょう。まずは電子マネー化するべきというところで、ほかの電子マネーサービスを検討しましたが、やはり自分たちでやったほうがいいということでPASELIを開始したということですね。

 アミューズメントビジネスが新しい何かをしないといけないという限界が見えてきたなかで、ネットワーク化が進んでいきました。麻雀格闘倶楽部はe-AMUSEMENTと同時に展開を開始していますが、そのときにはまだADSLが普及し出すかどうかぐらいの、常時接続が一般的になる一歩手前の時期です。そのネットワーク化が進んで十年経過していますので、ここでビジネスモデルも含めて新しいやりかたに変えていかないといけないと思います。

メーカーとオペレーターがインカムをシェアするビジネスモデルの変化

--ビジネスモデルの話でいくとオンライン化が進んでいくなかで、2010年からはe-AMUSEMENT Participationとして、オペレーターとメーカー側でプレイ代をシェアするビジネスモデルを導入しています。

沖田氏:過去を振り返れば汎用(はんよう)筐体向けに基板だけを販売するという形でしたし、専用筐体ではコンバージョンキットという形で販売し、ソフトウェアだけ交換してインカムを維持するというビジネスモデルが長く主流でした。ですが、まとまった形でのソフトとしなければならないので、販売ペースが1年に1回ぐらいになってしまい、そのスパンでは間隔が長く、お客様が離れてしまいます。

 分かりやすい例でいくと、音楽ゲームにおける新規楽曲の追加ですね。コンバージョンキットとなると数十曲をまとめて制作しなければいけませんが、タイムリーさを逃してしまう。ですがオンライン化が進んだことによって少ない曲でもタイムリーに出していける状況になりました。オペレーターには筐体の購入をお願いしつつも初期投資となる価格は下げて、ソフトのほうはこちらで更新を続けるので、プレイあたりの利用料をいただくインカムシェアという形としています。現在では他社さんでも行われているビジネスモデルかと思われます。

--初期投資が下がっているとのことですが、とはいえ消費税があり利用料を払うとなると、100円のままであることは利用者にとってはうれしいですが、1プレイに対する運営側の収益が厳しくなるかと思います。

沖田氏:だからなおのこと、今のご時世は1プレイ100円ではないと考えます。かといって1プレイ200円を強いるのは厳しいでしょう。120円や130円ぐらいが適正ではないかと考えます。もちろん値上げ感を出さないように、メーカーでも数十円分をより楽しめる付加価値の提案は必要ですが、その選択肢を取れない状況が問題です。

 過去を振り返れば飲料水の自動販売機は100円で販売していた時代が長かったですが、消費税導入のタイミングで110円に思い切って上げました。100円が110円に値上げするときにはさまざまな意見がありましたが、そこから120円の値上げはあまり意見が出なかったはずです。今は130円が標準的な価格ですが、プレミア感があるという付加価値を付けたコーヒーが150円などといった価格で販売されています。

 業界として思い切ったことをされたのだと推察しますし、柔軟な価格設定ができるようになれば、あと数十円の付加価値そのものにもバリエーションが出せます。そうして売上額が上がってくれば収益も上がります。なので100円硬貨以外の価格設定を一般化したいのです。

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