この記事では、CartoDBとMapboxの事例から、オープンソース、オープンデータ、アジャイル開発が地図ソフトウェアのイノベーションを後押ししている現状を見ていく。
人類にとっての地図の重要性は、どれほど強調しても強調しすぎるということはない。洞穴の壁に描き記された天国の図から、古代文明が作った各地への交易路を示す貴重な記録まで、その例は枚挙にいとまがない。地図は1000年もの間、直接的な観察によって苦労して作成されてきた。地図製作に使われる道具は時代とともに洗練され、太陽や星の位置から場所を割り出すことが可能になると、地図の精度も向上し、それ以前は考えられなかったような貿易、戦争、海や空を越えた探検が可能になった。
今日では、数億人もの人々がポケットや手のひらの中、あるいは車のダッシュボードの上に、動的なデータに基づいて作られた魔法のような地図を収めており、全地球測位システム(GPS)を用いて恐るべき正確さで地表での自分の位置を知ることができる。GPSシステムを盲目的に信じてしまうことも多いが、消費者グレードのGPSシステムを信じた結果、トラックが橋に突っ込んだという事件もあった。また、それよりはるかに多くのドライバーたちが、GPSを信じて危険な目に遭っている。
2012年には、Appleが身をもって正確な地図アプリケーションを作るのは簡単ではないことを示した。Appleの「マップ」アプリはその後改善されたが、この「MappleGate」事件は、良質なデータとソフトウェアが、消費者が期待するようなナビゲーション体験を提供する上でいかに重要かを教えてくれた。しかしこの恥ずかしい事件の背後で、地理情報システム(GIS)データと、GISデータを用いて地図を作成するツールの環境は、ダイナミックに変化しつつある。Googleが2012年に同社の地図データにアクセスするためのAPIの利用料金を引き上げた時、「地図のWikipedia」である「OpenStreetMap」へのアクセスは、好戦的なスタートアップ企業や、資源に乏しいメディア組織の数が増えるに従って増えている。
2015年2月に流れた、Googleが「Maps Engine」の提供を終了する可能性があるというニュースは、スタートアップ企業やEsriのような大手GIS企業が開発者を引きつけるためのチャンスを広げるだろう。
スペインのソフトウェアスタートアップ企業CartoDBの最高経営責任者(CEO)Javier de la Torre氏は、インタビューで「Google Maps Engineが廃止されれば、わが社の競合相手は少なくなる」と述べている。
「新しいテクノロジだけでなく、新たなビジネスモデルも登場しつつある」と同氏は考えながら話した。「よりよいソフトウェア提供モデルであるSaaSが実現しつつあり、われわれのようなそれを実現する企業は、顧客にロックインを強要することなくサービスを提供して、かなりの収益を上げている。コードはだんだん競争上の優位にはならなくなってきている。重要なのは顧客へのサービスであり、それがテクノロジの発展を後押ししている。このことは、イノベーションに対するアプローチを変えつつあるだけではない。それによって、人々が使いたいと思うような便利なものが実現して現実の問題を解決し、オープン化が進んで誰もがそれをシステムに組み込めるようになっている」(de la Torre氏)
多くの消費者やオンラインメディアの提供者にとっては、CartoDBは(筆者が書いたシビックテクノロジについてのコラムで取り上げたClearStreets.orgのような)オンライン地図を実現するフリーソフトウェアを提供する会社だが、同社は企業向けのサービスで収益を上げている。de la Torre氏の話では、同社のプラットフォームには9万以上のユーザーがいるが、最大の顧客は銀行業界や金融業界の企業であり、同社の地理空間技術は、どこでトランザクションが発生しているかを分析し、ビジネス戦略を検討するのに使われている。
同氏は「われわれは、データの可視化を支援するビジネスを行っている」と述べている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス