「Google Glass」の競合として2013年に登場したテレパシーですが、2年の開発期間を経て、2015年春にウェアラブルデバイス「Telepathy Jumper」を発売予定と現在報道されています。
前回ご紹介した「Uber」「Square」「Amazon.com」と同様に、テレパシーも創業期に特許出願をしています。デバイスで撮影した画像を共有する際に画像内に映っている人物のプライバシーを保護するために適切な画像処理を施すという内容です。2013年5月22日に申請手続を完了した後、出願審査請求はしばらくされていませんでしたが、2014年5月12日に手続きがとられています。その後、2014年8月19日に最初の審査結果が出ています。その中で不備の指摘などがされていて、2015日2月23日の時点では特許庁とのやりとりがまだ続いています。
どのような結論が出るのか、今春発売のプロダクトとどのような関係になるのか、興味のあるところですが、それとは別に、なぜテレパシーは急いだのでしょうか。
急ぐとコストがかかります。その代わりに、早く特許権が得られます。あなたの許可がなければ同じことはできない、これが「特許権」の威力でした。スタートアップにとって、この威力は、「いつ」必要なのでしょうか。今なのでしょうか。なぜでしょうか。特許(特許出願・特許権)を活用して会社の価値を高めていくためには、こうした問いに向き合うことがとても大切になってきます。
少し難しいところに話が入っていってしまいました。答えも1つではないかもしれません。連載の中で、スタートアップの方々がそれぞれに合った特許制度の使い方を見出すためのヒントを出していけたらと思っています。
第2回でお話したかった大切なポイントを振り返ります。
1つは、スタートアップが提供するプロダクトは、テクノロジで支えられている側面があればそれはおそらく「発明」であるということです。このことと強く関係して、まずは事業説明資料などでプロダクトの説明をしていただければ、「特許出願」の準備として十分です。
もう1つは、「特許出願」の完了まではビジネスのスピードとも歩調を合わせて急いで欲しいですが、その後は必ずしも急ぐ必要がないということです。急ぐとすれば、なぜコストをかけて今なのか、この問いを忘れないでください。時間とお金をかけて、不適切なタイミングで「審査」を進めてしまって、特許(特許出願・特許権)の価値を下げる結果になっている例も少なくありません。
第1回、第2回で「特許」への理解を深めていただけたでしょうか。次回からは、これまで触れた内容をさらに踏み込んで解説してきます。もしお時間があれば、特許的視点に立つと、みなさんのプロダクトがどのように見えるか試してみてください。何を「発明」として捉えるか、浮かび上がってくる姿は1つではないと思います。
ご質問ありましたら Twitter(@kan_otani)で。
2003年 慶應義塾大学理工学部卒業。2005年 ハーバード大学大学院博士課程中退(応用物理学修士)。
2014年 主要業界誌二誌 Managing IP 及び Intellectual Asset Management により、特許分野で各国を代表する専門家の一人に選ばれる。
専門は、電子デバイス・通信・ソフトウェア分野を中心とした特許紛争・国内外特許出願と、スタートアップ・中小企業のIP戦略実行支援。Twitter : @kan_otani
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