スマートマシン時代の到来

人間とロボットが共存するために--日本のロボット新戦略を見る

 内閣官房は1月23日、「第6回ロボット革命実現会議」を開催し、初の「『ロボット新戦略』(ロボット革命実現会議とりまとめ)」を公表した。ロボット新戦略では、2020年までに政府と民間企業で1000億円をロボット開発に投資し、市場規模を現在の6000億円の4倍となる2兆4000億円まで成長させていく目標を掲げている。

 日本は、世界でも類をみないスピードで少子高齢化、生産年齢人口の減少、社会保障費が増大するなどの“課題先進国”だ。製造業の生産現場、医療や介護現場、農業や建設、インフラの作業現場などの幅広い分野において、人手不足の解消や過重な労働からの解放、生産性の向上などの社会課題を解決し、産業創出に寄与するロボットへの期待が高まっている。

 一方、日本は、1980年代以降ものづくり分野を中心に、ロボットの生産、活用など各面において世界をリードする「ロボット大国」としての地位を維持してきたが、欧米の先進国や中国などで政府主導のロボット関連のプロジェクトが相次いで立ち上がるなど、政府も巻き込んだロボットを巡る新たな国際競争が始まっている。

 米国が2011年に公表した「National Robotics Initiative(国家ロボットイニシアティブ)」では、国立科学財団(NSF)、国立衛生研究所(NIH)、航空宇宙局(NASA)、農務省(USDA)の4団体が、人工知能分野や音声や画像認識などの分野を中心とした次世代ロボットの基礎研究に対して毎年数千万ドル規模の支援を実施している。

 こういった背景を受け、政府では、「日本再興戦略」改訂2014(2014年6月閣議決定 年6月閣議決定)の中で、「ロボットによる新たな産業革命」として、ロボット技術の活用により生産性の向上を実現し、世界に先駆けての課題解決、企業の収益力向上、生産性向上による賃金の上昇を図るといったテーマを掲げている。

 政府は、新戦略で示すロボット革命で目指す社会として、以下の3つをあげている。

  1. ロボットが劇的に変化(「自律化」「情報端末化」「ネットワーク化」) 自動車、家電、携帯電話や住居までもがロボット化
  2. 製造現場から日常生活まで、さまざまな場面でロボットを活用
  3. 社会課題の解決や国際競争力の強化を通じて、ロボットが新たな付加価値を生み出す社会を実現

 政府は、ロボット革命を実現するために、以下の3つを柱としている。

  1. 日本を世界のロボットイノベーション拠点とする「ロボット創出力の抜本強化」
  2. 世界一のロボット利活用社会を目指し、日本の津々浦々においてロボットがある日常を実現する「ロボットの活用や普及(ロボットショーケース化)」
  3. ロボットが相互に接続しデータを自律的に蓄積、活用することを前提としたビジネスを推進するためのルールや国際標準の獲得などに加え、さらに広範な分野への発展を目指す「世界を見据えたロボット革命の展開・発展」

 政府は、ロボット革命実現会議の議論や成果を踏まえて、ロボットイノベーションの拠点として、現場における革命実現のための産学官を分厚く巻き込んだ推進母体となる「ロボット革命イニシアティブ協議会」を設置する。

 ロボット革命イニシアティブ協議会では、産業競争力会議や総合科学技術・イノベーション会議、規制改革会議などの外部機関や、諸外国とも連携し、プロジェクトのニーズ、シーズのマッチングや、国際標準の獲得、セキュリティへの対応、国際標準や連携などを推進する。さらには、イノベーションのための場づくりとして、新たなロボット技術の活用を試みる実証実験のための環境整備や人材育成を実施する。

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