そして3つ目の要因は、ソフトバンク自体の成長を見据え、国内通信事業の体制を大きく変えたいという狙いだ。ソフトバンクの通信事業は、特にボーダフォン日本法人を買収して携帯電話事業に参入して以降、長らくソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏がトップを務めて陣頭指揮を執るとともに、自身のキャラクターを活かして発表会などで精力的な製品アピールを実施。結果としてNTTドコモやKDDIからシェアを奪い、市場でも確固たるポジションを得たのは確かだ。
しかし、ここ数年続いたスマートフォンの勢いが、2014年より急速に停滞へ向かうなど、国内の携帯電話市場は飽和に向かっており、大きな伸びが期待できなくなりつつある。それゆえソフトバンクは、2013年に米スプリントを買収して米国での通信事業へ乗り出したのに加え、インドなど新興国のインターネット事業への投資に力を入れるなど、今後の成長が見込める海外事業へと、成長に向けた主軸を移し始めている。
そうしたことから、2014年5月には、孫氏がシーズンごとの大規模な新機種発表会を実施しないと宣言するなど、国内通信事業に対する取り組みが日に日に弱まってきている印象を強く受ける。それに伴って新たな施策も減少傾向にあり、ソフトバンクモバイル自体の業績も最近は停滞傾向にあったようだ。だが国内の通信事業は、ソフトバンクにとって大きな売上を安定して獲得する主力事業の1つであることに変わりはなく、その柱を失えば事業全体への影響は決して小さくない。
そこで今回の合併では、国内事業を取り仕切ってきた宮内謙氏がソフトバンクモバイルの代表取締役社長となる一方、孫氏は代表取締役会長に就任するとしている。この人事によって国内の通信事業を宮内氏に任せ、孫氏は海外事業に集中することで、国内事業の安定を図るとともに、海外での成長を加速させたい狙いがあるといえよう。
ソフトバンクモバイルは当面、従来のブランドを維持しながらサービス展開しつつ、IoT(Internet of Things)やロボットなど新しい分野での取り組みを進めるとしているが、新体制へと移ったことで、ここ最近弱まっていた新施策の強化なども期待される。4社の合併で、PHSを含めば携帯電話契約数がKDDIを上回り国内2位となるソフトバンクモバイルだが、現在の状態を維持しつつ業績拡大へとつなげられるか、新体制による手腕が今後大きく問われるところだ。
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