個人、組織はどのようにして、失敗力を身につけるか--将来の成功につなげる力 - (page 2)

失敗を隠ぺいせず、糧とできる企業風土を--ホッピービバレッジ石渡氏

 次に、組織としての失敗力の身につけ方について、岩本氏は「失敗を恐れず、チャレンジする企業風土作りや、失敗を組織としてマネージする仕組み作りなど」を論点とした。

 石渡氏は同社創業者の孫だ。経営を引き継ぐに当たり、前社長である父から「第3の創業を支える、心を共にしてくれる社員を育てなさいと言われた。社会のことを何も知らない新卒で入社してくる社員たちをゼロから育てて、それを力にしていく戦略を立てた」。2007年から新卒採用を始め、現在約40人の社員のうち、過半数が入社1年目から8年目までの社員だ。彼らに教えているのが基礎力だという。

 「当社には、“失敗”という言葉はない」と石渡氏は話す。失敗とは学びの場だという考え方を徹底し、失敗ではなく成果、結果と捉え、いかにしてそれを改善、進化させていくかが基本となる。「怖気づいてはいけない。営業担当者がある顧客に叱られると、その顧客のところに行かなくなってしまう。一方、成功すると、傲慢になってしまって学ばなくなる。そこで、行動した結果が成果であると教えている。また、失敗を許す許容範囲を広くしておくことが重要。明るくオープンな企業風土、文化にすることも必要」とする。起こったことを公にでき、上司らは、それを責めるのでなく、アドバイスできるような組織文化の醸成を目指している。

コミュニケーション強化のため、社内にもQ&Aを活用--オウケイウェイヴの兼本氏

 兼本氏は「起業後しばらくすると、資金調達に苦慮するようになった。当初は、支援者がいなかったのだが、楽天の三木谷氏とサイバーエージェントの藤田氏から、出資を受けることができた。当時、競合他社が、当社の買収、合併を持ちかけてきたが断った。その際、いきさつを知った一部の社員が退職したいといってきた。なぜ、自分たちに、もっと相談してくれなかったとの思いが、その背景にはあったからだ。それ以来、社内のコミュニケーションを重視するようにした。社内にQ&Aシステムを設置し制度化して、失敗例だけでなく、それを乗り越えた体験などを話すよう呼び掛けた」と、兼元氏は語った。

新会社設立、失敗率は4割、それでも成長のばねに転化--サイバーエージェントの藤田氏

 藤田氏は「当社は、新規事業への参入など、さまざまなチャレンジをしてきた。これまでに新会社は94社設立したが、現在残っているのは59社。成功率は60%くらいで、40%は失敗ということになる。しかし、中長期的にみれば、失敗も資産になっていると考えている。秋元康氏と組んでテレビで番組を開始し、3億円ほど投資したが、事業にはまったく跳ね返ってこなかった。しかし、このときに番組制作関連の方との人脈ができた。アメブロに芸能人ブログが多いのは、あの番組をきっかけに、多くの芸能事務所との付き合いが広がったからだ」と語った。

 制度や企業風土の点では、CAJJ制度を採用している。失敗にも許容範囲、限度を設けるものだ。「危険なのは、企業が失敗した際に、今度はこれで逆転できるとばかり投資を膨らませていくばくち打ちのようなことをすることだ」。CAJJは、これに歯止めをかける。「チャレンジした社員には、敗者となってもセカンドチャンスを与える。単に失敗を非難したり、排除してはビビッてしまう」と指摘、限界を設定しながらも、失敗を恐れず、挑戦できる企業風土の構築を図っている。

 岩本氏は最後に「失敗に留まるのではなく、“失敗”に“力”という言葉が付いたことで、有意義なカンファレンスになったのではないか。皆さんも是非、失敗力を身につけ、経営に活かした頂きたい」と述べた。

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