新経済連盟が開催した、失敗について学び、起業と経営のヒントを得ることを図る「失敗力カンファレンス」では、「失敗力の身に着け方」と題し、サイバーエージェント 代表取締役社長の藤田晋氏、オウケイウェイヴ 代表取締役社長の兼元謙任氏、ホッピービバレッジ 代表取締役社長の石渡美奈氏が、失敗時の対処の仕方などについて語り合った。慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 特任教授の岩本隆氏がモデレーターを務めた。
このカンファレンスの論議では、失敗力について「失敗を、自身や社会のアセットにし、失敗によって蓄積したアセット(資産)をレバレッジして将来の成功につなげる力」と定義。まずは「個人としての失敗力の身につけ方」として今回の登壇者諸氏が、失敗力をどのように身につけてきたか、意識の持ち方や失敗したときの対処の仕方などを論点とした。
石渡氏は「自分の身に起きることは、すべて自分が引き起こしているという意識や、乗り越えられない試練は与えられないといった考えが重要」と話す。また、「自分に起こる現象から学ぶべき意味を探って迅速に対処し、自分で解決できない問題は、躊躇なく人に聞くべき」としたうえで「失敗がなければ成長できないものだが、大難を小難に変える努力を、常に積み重ねることが肝要」と語った。
兼元氏は、インターネットを介して質問と回答を募る、いわゆるQ&Aサイトを展開するオウケイウェイヴを創業した。小学生のころには、在日韓国人3世(現在は帰化)であることから、それを知った周囲からいじめを受けるようになった。最も仲の良かった友人からもいじめられるようになった。それから25年ほどは、そうした体験の影響から抜けられなかったという。しかし、モノの見方を変える転機のきっかけとなったのは、心理学者であるAlfred Adlerの著書にあった逸話だった。
電車に子供連れの男が乗ってきて、座席はそこそこ空いていたが、その男が座ると子供たちは、他の乗客の足を踏んでいる。乗客は冷ややかな目で彼を見て、ざわつき始めた。たまりかねた女性が声をかけたところ、その男は、「家を出るとき、病院にいる妻の訃報を聞き、つい座ってしまった」と語った。すると、乗客たちは態度が変化し子供たちに優しく接し、その女性は彼を励ました。
この話をヒントに兼本氏は「インターネット上で、Q&Aのやり取りができる場を設ければ、さまざまな考え方をひっくり返せるくらいの力を持ったコミュニケーションできるかもしれないと思い、15年ほど前にオウケイウェイヴを立ち上げた」とする。個人としての失敗力では「(いじめなどによる)やりとりから負の方向に進むだけではなく、これは何か意味があるのではないか。生まれたからには、何かするために命を使いたいと考え、切り替えることができた」と述べた。
国内IT産業がネットバブルに沸いていた2000年、藤田氏は26歳で、東証マザーズに同社を上場させた。「その頃は、いわば、絶頂期だったのだが、挫折を経験してないようではダメだといわれた。その後バブルが弾け、株価は10分の1にまで下がったら、だからダメなんだと何をしてもたたかれた。3~4年は、じっと耐えていた。若い人々と話していると、新たに起業しようかというようなとき、『それはリスクがあるので』といわれる。若いうちは失うものなどないだろう。本当は(失敗して)恥をかいたり、バカにされたりするのが嫌だという程度の気持ちなのではないか。ある程度の失敗をして、経験を積むことが大事」と指摘する。
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