12月19日に開催された、新経済連盟主催の「失敗力カンファレンス」。3つ目のパネルディスカッションでは、グロービス経営大学院経営研究科研究科長の田久保善彦氏がモデレーターを務め、2人のITベンチャー起業家がスピーカーとして登壇した。「起業しながら失敗力をつける」をテーマに、起業家として経験した“失敗談”と、そこからの学びについて語った。
1人目のスピーカーは、freee代表取締役の佐々木大輔氏。主軸の事業は、2013年3月にリリースしたクラウド型の会計ソフト「freee」だ。オンラインの銀行のデータやクレジットのデータを登録すると、自動で会計帳簿を作成できるなど自動化された処理が特長で、クラウド型会計ソフトで圧倒的なシェアを誇るサービスだ。2012年7月にfreeeを設立する以前の佐々木氏は、大学卒業後に大手広告代理店に入社後、投資アナリスト、ベンチャーCFO、Googleのマーケティング担当と渡り歩いた経歴を持ち、学生時代にもネットリサーチ会社のベンチャー企業でインターンシップも経験している。
そしてもう1人は、クラウドワークス代表取締役社長 兼 CEOの吉田浩一郎氏。エンジニアとクリエイターのクラウドソーシングサイトの運営会社として2011年に同社を起業し、以降、監査法人による起業家表彰制度「EY Entrepreneur Of The Year 2014 Japan」の“チャレンジング・スピリット部門”で大賞を受賞するなど日本のスタートアップ起業家の中でももっとも注目を集める1人だ。12月12日には東証マザーズに上場したばかり。クラウドワークスを設立する以前の吉田氏は、パイオニア、展示会運営会社で新規事業の起ち上げ担当者などを経て、ドリコムに入社後は執行役員として東証マザーズへの上場を経験。2007年10月に独立し、経営コンサルティングとITシステムの受託開発事業を行うZOOEEを設立して1回目の起業を果たした。しかし、その後ベトナムでのアパレル事業で多大な損失を出し、取締役陣が離反するなどにより、事業の失敗を経験している。
そんな多彩な経歴と経験豊富なIT起業家の2人からまず語られたのが、“過去の失敗のプロセスから得た大きな学び”。まずは吉田氏から語られた言葉は意外なものだった。
「起業家に重要なのは“サラリーマン力”。というのも、ふつうは起業家というのはとにかく自分がやりたい、自分でやりたいというのが強いものだが、私が過去の失敗から学んだのは人に意見をよく聞くこと。私の場合、初期はYJ キャピタルの小澤氏、次はサイバーエージェントの藤田氏のアドバイスに従い、そのとおりにしたら会社がどんどん伸びていった。でも、人の言うとおりになんでもやるというのは、実は起業家にとってはなかなか難しいこと。1回目の起業で失敗した時は、頑固だったからこれができなかった」(吉田氏)
そして2番目に挙げたのが“器を知ること”だ。吉田氏は「これまで私はさまざまな失敗と挫折を経験して実はいろんなことを諦めてきた。でも、経営だけはなぜか諦められなかった。1度失敗したけれど、もう1回チャレンジしたいと思った。自分にも社会の中での役割がきっとあるはずだと、失敗をすることで初めて自分自身を知ることができた」と語った。
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