ウェアラブル端末を作る上で重要なこと--ソニーの戦略

井指啓吾 (編集部)2015年01月16日 09時00分

 東京ビッグサイトで開催中の装着型デバイス技術展「ウェアラブルEXPO」で、1月14日、ソニーモバイルコミュニケーションズのシニアバイスプレジデントで、ソニーのUX・商品戦略本部 企画運営部門 部門長の田嶋知一氏がソニーのウェアラブル戦略について語った。

 ソニーでは現在、プレイステーションの「コンピュータエンターテインメント」、携帯電話の「コミュニケーションエンターテインメント」に続く新たな領域として、ウェアラブル端末に関わる「ライフエンターテインメント」での取り組みを進めている。人々の日常生活のすべての活動、ひいては人生そのものをより楽しくするような商品やサービスを提供するという内容だ。

 これと密接な関係にあるのが、スマートフォン。「単なる通信機器ではなく、強力なコンピューティングパワーとクラウドへの接続機能、柔軟なUIを備えて、生活のあらゆる活動を支援できる万能なライフツールであると捉え始めたのがきっかけ。おそらく人類史上で最も汎用性が高く、最も使用頻度が高い、万能なライフツールなのではないかと考えた」と田嶋氏は話す。

 ライフエンターテインメント領域では、ソニーが全世界に展開するAndroid OSベースのスマートフォンブランド「Xperia」を起点とし、ウェアラブル端末やアプリケーションサービスなどを補完的に加えることによって新しい体験を生み出していく。なおXperiaは現在、全世界で約4000万台規模の商品提供をしており、ユーザーベースで見れば、その約2倍の規模のプラットフォームを構築しているという。

ソニーが目指すウェアラブル端末、第一弾製品の反響

 “新しい体験”を作り出す試みを、田嶋氏は「スマートウェアエクスペリエンス」と呼ぶ。スマートウェアとは、スマートネスとウェアラブルを組み合わせた造語だ。ソニーが目指すのは、「生活をする人間そのものの能力を拡張すること。あたかも脳や体、心の能力を延長させた一部分であるかのような商品や体験を作り出したい」。

 ウェアラブル端末を身につける部位は腕、腰、胸元、頭回りなどさまざまだが、ソニーが2014年春に世界市場に投入したのは、腕に装着する「SmartBand」だった。バンド部分と小さなコア部分とから構成されており、コアに3軸加速度センサ、スマートフォンに届いたメールや着信を通知するためのバイブレータとLED、スマートフォンと接続するためのBluetooth機能、そして最大5日連続稼働させるための電池を集約。コアとバンドは着脱可能で、さまざまなファッションスタイルに対応させることを目指している。

◇米CNETによるレビュー
ソニー「SmartBand」レビュー--ライフログを記録するスマートなデバイス


 SmartBandで取得した体の動作データなど日常の記録からユーザー活動を可視化するのは、専用アプリ「Lifelog」が担う。日々のコミュニケーションや運動についての情報を確認できるほか、アクティビティの目標を設定し、その経過をチェックすることもできる。

 田嶋氏は同サービスの次のステップとして、「活動傾向に基づいて、これからの生活や人生が楽しくなるようなヒントやアドバイスが得られるようにする」と説明。さらに、物理的なモーションの動きだけでなく心の動き(エモーション)、メディア消費やソーシャルコミュニケーションの記録に加え、心拍や発汗といった身体情報を記録することで、ユーザーの心と体の動きを可視化し、より楽しい生活につなげていくことを目標にして取り組んでいくという。

  • “Look Up”UX

 「上を向いている状態でのさまざまな体験(“Look Up”UX)を実現させたい。現在、スマートフォンは画面のUIを指でタッチするものなので、ポケットやかばんからスマートフォンを取り出して、下を向いて操作、閲覧する状況だ。電車の中でも街でも、みんなが下を向いている風景は決して素敵なものではない。音声やジェスチャー、視線、振動など新たなUIを編み出し、最終的には人間の感覚気管が集中している頭周辺のソリューションを見出したい」。

 なおSmartBandの発売以来、ユーザーから多くのフィードバックを受けており、主なものとして「活動データが何を意味するのかの洞察がなければ意味がない」「ウェアラブル端末を着用している姿は社会的に違和感がある」「身につけるにはファッション性が低い」「個人データの安全性が心配」「設定や閲覧の操作が煩雑」「機能の進化がないと飽きてしまう」などがあるという。

 田嶋氏は「ユーザーにとって明確なユースケースや価値が掲示しきれていない。個人のニーズが非常に多様であるため、それぞれのニーズにどのように柔軟に、拡張性をもって対応するかが我々の今の課題」と話した。

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