富士通研究所は1月13日、小型軽量な指輪型ウェアラブルデバイスを開発したと発表した。数字や漢字を空中で入力できる「手書き入力機能」とNFCタグリーダを備えているのが特長だ。実証実験を経て、2015年度中の実用化を目指す。
重さは10g以下と装着負荷の軽いデバイスで、モーションセンサ(加速度、ジャイロ、磁気)、NFCタグリーダ、入力操作ボタン、センサ処理マイコン、Bluetooth Low Energy、バッテリを備える。
指輪型のウェアラブルといえば、2014年10月に発売されたログバーの「Ring」が浮かぶが、コンシューマ向けのRingに対し、富士通のデバイスは主に設備のメンテナンス現場での利用を想定したもの。富士通では、2014年2月にグローブ型のウェアラブルデバイスを技術発表しており、それに続く補助デバイスだ。
工場やビルのメンテナンスなどの作業現場では、ヘッドマウントディスプレイをはじめとするウェアラブルデバイスの利用が注目されているという。しかし、ディスプレイに表示された「はい」「いいえ」などの情報の選択や、作業現場で数値入力や現場の状況をメモするなどの付帯作業が容易でないという課題があり、それを解決できるデバイスとして開発された。
NFCの搭載により、検査作業などで作業もれが発生したときにアラートが出せるほか、現場が騒々しいときには映像で作業を支援したり、反対に作業対象から目を離せないときには音声で案内したりできるなど、利用シーンに応じてフレキシブルに対応可能。
富士通研究所 ヒューマンセントリックコンピューティング研究所 ヒューマンインタラクション研究部の村瀬有一氏は、「現場の声を聞くといろいろな用途がある。指先には何も着けたくないという現場もある。グローブから手首だけ残した形にし、時計ぐらいのサイズにおさえて、手のひらにはつけないという選択もある。指輪がすべてとは思っていない。現場に応じたニーズに応じることが重要」と話した。
なお、今回特長となっている手書き部分には、空中で手書きをするときの指先の運動成分を抽出し、その軌跡を文字として認識する技術を搭載した。
空中で文字を書くと境目がなくなるため、一筆書きの文字にならざるを得ない。そこで、自動で手書きの「運動成分」を検出し、余分な線を消して補正し認識を向上させる。さらに処理技術や、作業中の体の動き(ノイズ)を検出し、認識しやすくする技術などを盛り込んだ。
指先で空中に文字を書くことによりメニューを選択したり、現場で撮影した写真の上に手書きでメモを残したりできるほか、NFCタグリーダでタグをタッチした際に作業対象物を特定し、作業内容を提示したりできる。
数字の認識は、小数点も含めて行えるほか、数字であれば95%が特別なトレーニングなしに認識できるという。実際、体験コーナーにいた記者たちも初めての操作で認識できていた。ただし「被験者はまだ10人ぐらいなのでもっと検証が必要で、漢字などは個人個人のクセがあるので、まだこれから」(村瀬氏)。
なお、デモではPCと連携していたが、スマートフォンやタブレットなどさまざまなデバイスと連携できるのも特長のひとつ。「作業現場は、必ずしもWi-Fiでクラウドと接続できるいい場所とは限らない。スマートフォンなどの端末の中にある程度アプリケーションを入れてサービスを届けられるようにもできる」(村瀬氏)としている。
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