富士通研究所(富士通)は2月18日、保守作業などの現場向けにグローブ型のウェアラブル端末を開発したことを発表した。手が使えない作業中などでもジェスチャ操作によって作業内容を記録でき、業務の効率化が期待できるとしている。同社では、2015年度中の実用化を目指す。
近年、工場やビルのメンテナンスなどの現場作業ではスマートデバイスの活用が進んでいるが、基本的には作業者が端末を操作して必要な情報を調べたり、入力したりする必要がある。また、現場によっては手袋を装着していたり、手が汚れていたりするために、端末の取り出しや操作ができず、操作のために作業を中断してしまうケースも少なくないと、富士通研究所ヒューマンセントリックコンピューティング研究所 ヒューマンインタラクション研究部 主管研究員の村瀬有一氏は語る。
そこで、富士通ではNFCタグリーダとジェスチャ入力機能を備えたグローブ型のウェアラブル端末を開発。コネクタや作業パネルなどに貼り付けられたNFCタグに触れるだけで、その作業に必要な手順をモニタなどに表示できる。また、手首を曲げるといったジェスチャ操作をするだけで作業結果を入力できるという。
実際の作業とジェスチャを区別するため、通常の作業中にはほとんど表れない手の甲を反らせる「背屈」の姿勢で動作するとジェスチャとして認識するようにした。この技術を活用すれば、たとえば左右の動きでヘッドマウントディスプレイ上に表示されたマニュアルのページをめくり、上下の動きで表示のスクロールを操作するといったことが可能になる。同社の社内実験では、ジェスチャの98%を認識できたという。
また、身に付けるタイプのウェアラブル端末では大型のバッテリを搭載することが難しいため、低消費電力での駆動が前提になる。そこで、指先に接触センサを搭載し、タッチした瞬間だけNFCタグリーダを起動することで低消費電力を実現したという。これにより9時間の駆動が可能になり、1日の業務でも十分に利用できるようになったとしている。
同社では今後、実証実験などを経て2015年中に実用化したいとしている。また、個人向けのウェアラブル端末の開発については「多くの作業現場でまだまだICTが活用されていない。そういうところには非常に大きなニーズがある。やはり業務支援のサービスをまず切り開いていきたい」(ヒューマンインタラクション研究部 部長の沢崎直之氏)と説明。当面は法人市場に注力し、個人向けの製品については他社の動向などを見ながら検討したいとした。
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