「アニメーションはどんな芸術形態よりも圧倒的に共同作業の要素が大きい。プロセス全体を1人で説明できる人間はいない。そのため、全員が本当に互いを頼っている。われわれはクリエイティブな面に注力できるが、技術的な面とその仕組みについてはあまり詳しくない」。Williams氏はこのように語った。
Hall氏は次のように述べている。「われわれは米航空宇宙局(NASA)のような存在であり、用務員のような存在でもある。彼らは本当に聡明だ。映画『アポロ13』で、通気口にダクトテープを貼るよう皆に指示するシーンを思い出す」
Hall氏とWilliams氏は、Hyperionの仕組みに関する技術的な詳細の説明をCTOのHendrickson氏に譲った。
「Hyperionは、光線が現実世界でどう動くかをコンピュータでモデル化する。光線はあなたが今いる部屋の中を動き回るとき、さまざまな物体と互いに影響し合う。われわれは、それらの物体と光線に発生する接触面を正確に表現する。光線は物体に当たると反射する。拡散表面に当たれば、何千とは言わないまでも、何百ものエネルギーの低い光線に分裂する。こうした反射現象が何度も繰り返される。Hyperionは、繰り返される照射と反射を非常にうまく整理する。こうしたすべての動きをコンピュータが理解しやすい構造にまとめるのが得意だ。われわれはキャッシュとメモリを効率的に使用している。そうすることで、はるかに多くの計算処理をコンピュータに行わせることができる」(Hendrickson氏)
Hyperionの開発には2億コンピューティング時間を要した。各シーンを照らす光の物理的課程をシミュレートしていたからだ。Hendrickson氏は次のように述べる。「ご想像のとおり、そのシミュレーションはCPUに大きな負荷をかける。各シーンで、100億の光線が反射して、シーンのあらゆるところに光エネルギーを運ぶ。そして、シーン内のさまざまな物体と相互作用して分裂し、さらに多くの光線になる。それによって、柔らかさと陰の深みのようなものや、本物のような明るい部分がシーン内に生まれる。コンピュータ生成画像では普通見られないものだ。そのことに大きな興奮を覚えている。映像を見てもらえば、われわれの言っていることが分かるだろう」
実験を続けている間も、チームは代替策を用意していた。Hyperionがうまくいかなかった場合は、映画「アナと雪の女王」で使用されたPixarの「RenderMan」ソフトウェアを使うという計画だ。
「しばらくの間、われわれは2つの方法、つまり『アナと雪の女王』の方法とHyperionを同時に進めていたが、やがて古いスタイルを捨て、最終的にすべてを受け入れ、『自分たちはこの方法でやる。ビジュアルはとてつもなく素晴らしいものになるだろう。何としても、これを実現させなければならない』と言った。当時、それは少し恐ろしいことだった。われわれにとって、それは危険を冒すことを意味していた。人知の及ぶ限り最大限の革新をシーンに盛り込みたい。それはストーリー、画像、われわれがこれらの世界を構築するために利用するテクノロジのすべてに内在する。そのすべてが同等の革新と見なされる」(Hendrickson氏)
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