次に“店舗外でのブランド体験をリッチ化”する試みとして紹介されたのは、Amazonと共同で実施した企画だ。これはAmazonで日産の軽自動車「デイズ ルークス」が販売されるというもので、最終的には日産への問い合わせにつながる仕組みだが、カラーを選んだり、購入ボタンを押すといったAmazonの一連のシステムで疑似的に購入体験ができるというユニークなものだ。小暮氏によると、顧客が“来店前に購入車種を決めている”あるいは“来店への敷居が高いと感じている”という課題に対して、疑似体験によるタッチポイントの機会創出を図ったものだそうだ。
そして3つ目が“一気通貫したモニタリング”。前述のとおり、以前はウェブの閲覧情報と来店情報というオンラインとオフラインのマーケティング情報の接続が相関分析によるKPI測定でしかなかったのに対して、現在はウェブの閲覧履歴から来店、成約に至るまでを購入者の行動履歴として紐づけし、モニタリングが行われているという。これにより、どういった層に対してどのような取り組みが効果があるのかなどユーザーの属性による分析が可能になったという。
最後に、4つ目の取り組み指針となるのが“ボーダレスな組織編成”。これは組織が複雑化するにつれて短期間で社内を異動することが多くなり、専門的な人材が育たず、さらに広告代理店との距離が遠く、同じ業績達成指標を得るのが難しいという課題に対して行われているもので、日産では外部のパートナーなど社内外の人材を問わず、社内に常駐してフラットな関係でチームを編成するよう努めているとのことだ。
日産は1999年から仏ルノーとのアライアンスを進めているが、小暮氏によると、これもボーダレス化の取り組みの1つとのこと。アライアンスにより、実際に人材の交流や共同での製品開発などが行われているほか、部品の共有化によるコスト削減効果で高性能な装備が安価で提供できたり、短納期での生産が可能になるなどのシナジー効果が生まれているという。
小暮氏は最後に「こうした多様な人材で組織を編成し直すことが、社内に新しい発想や組織力の強化をもたらし、オンライン/オフラインの統合や、他企業とのアライアンスなどボーダレスなマーケティングを実現させることができた」と、ボーダレスなマーケティングにおける“ダイバーシティ(多様性)”の重要性を語り、講演を締めくくった。
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