2010年頃よりグローバル化を推し進めている楽天。社内英語公用語化や外国人採用ばかりが注目されている同施策だが、実は同社グループ内にとどまらず、楽天市場の出店店舗にも影響を与えている。
日本の全国6都市で16回開催された「楽天市場 うまいもの大会」が10月、海外で初めて台湾で開かれた。その翌月、11月25日から12月4日まではシンガポールでも同イベントが開かれている。日本の「楽天市場」で人気のグルメやスイーツを販売する店舗が集結するリアルイベントで、海外進出を検討している店舗が台湾では15店舗、シンガポールでは11店舗出店した。
楽天が現地で展開する「台湾楽天」「Rakuten.com.sg(シンガポール楽天)」のPRや売上拡大、ユーザー数増加に寄与することのほかに、どのような狙いがあるのか。楽天市場事業を担当するPR推進部部長兼地域活性グループマネージャーの塩沢友孝氏に聞いた。
楽天市場は、海外の人々が商品を購入する「越境EC」に対応する、日本語が英語と中国語の繁体字に自動翻訳される機能をオプションとして備える。塩沢氏によれば、海外で開催する楽天市場 うまいもの大会は、この機能を使うような海外展開に前向きな店舗に向けて、主に現地でテストマーケティングを実施する場として提供しているという。
塩沢氏が目標とするのは、日本の楽天市場に出店している店舗に、その国の楽天市場に出店(直出店)してもらうこと。シンガポールではすでに1店舗が現地での出店を決めており、台湾で18日間開催した際には、現地での反響を受けて、いくつかの店舗が現地の楽天市場に出店することを検討しているという。
楽天では海外展開に向けた3つのステップを用意している。まず(1)リアルの海外物産展に出店、(2)リアルの海外物産展と同時に展開する特設ECサイトに出店、そして(3)現地の楽天市場に出店という流れだ。台湾ではリアルと同じくらいネットでも商品が売れたそうだ。
塩沢氏は、このリアルとネットを同時に展開することこそが、海外で物産展を開く際のキモだと説明する。「会期中に商品の在庫が無くなりそうな場合、日本でのイベントであれば発注して2日程度で届くが、海外だとそうはいかない。費用も日数も多くかかってしまう。そのため事前にまとめて送ることになるが、そこには在庫が余ってしまうリスクがある。特設サイトで同時販売することでこれを軽減できる」。
またもう1つの狙いとして、店舗のファンを作りやすいことを挙げる。「さまざまな企業が海外で物産展を開いているが、基本的にはその場限りのもの。会期内でもちろん売上は立つが、その時の顧客にその後のアプローチができない。特設サイトを通し、メールアドレスなどの顧客情報を獲得することにより、商品を1度買ってもらった顧客に対してリピート購入してもらうためのアプローチがしやすくなる」。
一方で、楽天グループの現地法人を支援する意図もある。「日本の楽天市場が来たからには、日本の良い商品を売っているだろうという現地顧客の期待がある。また、現地法人は自らも日本の商品を取り扱いたいという意識がある。グローバル化の流れの中で、日本の店舗と現地法人の支援策として、リアルとネットを融合させて海外物産展を開催していくことが僕らの1つの存在意義だと思っている」。
なお、具体的な内容は明らかにしなかったが、台湾やシンガポールでの反響を見て、すでにいくつかの現地法人から物産展の誘いをもらっているそうだ。
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