米Evernoteは11月10日、日本経済新聞社(日経)と資本業務提携することで基本合意したと発表した。日経はEvernoteに2000万ドル出資し、業務提携の一環としてEvernoteと「日経電子版」の有料会員を対象として、Evernoteに作成したノートの内容に連動した日経電子版の記事を自動的に配信する機能を2015年初頭から提供開始するという。
Evernote CEOのフィル・リービン氏は、同日都内で行われた発表会のプレゼンテーションの中で、日経との提携を含むEvernoteのビジネス向け機能の強化を発表。その狙いについて同氏は「ユーザーの70%は仕事のためにEvernoteを使用している。生涯をかけて成し遂げたい仕事を実現するためにEvernoteができることは、Evernoteそのものがワークスペースになることだ」と述べ、Evernoteが生産性を高めるツールの1つになるのではなく、Evernoteで業務生産性の全てをカバーできるトータルなプラットフォームを目指すという方向性を示した。
リービン氏は、仕事の基本的な要素を「書くこと」「集めること」「見つけること」「発表すること」の4つに分類。その中で、すでに公開済みのプレゼンテーションモードについて、Evernoteに保存された複数のメモやクリップから簡単な加工でプレゼンテーションを作成し、発表、共有することができる点を紹介した。
また、ノートやプレゼンテーションを共有しながら必要なメンバーとその場でチャットすることができるコミュニケーションツール「ワークチャット」のリリースを発表。メモや写真を保存したりウェブサイトの情報をクリップしたりといった従来の機能に加え、業務の情報共有やコラボレーションワークの円滑化をEvernote内で完結するための機能強化がなされている。
日経がコンテンツを配信することになった「コンテキスト」は、ユーザーがEvernote上でノートを書き進めると、書いた言葉をリアルタイムに解析してその内容に関連するコンテンツパートナーの情報や過去の自分のノート、共有している他のユーザーのノートなどを自動的に表示するもの。ノートの中に引用したり、共有したりすることができる。
この機能の利点について、リービン氏は「自分が書いているノートに関連するあらゆる情報を提供することで、探す手間を省くことができる。ユーザーにはEvernoteを常にベストな状態で書いて欲しい」と説明。米国ではThe Wall Street JournalやLinkedInと提携してニュース記事や人物のプロフィールなどを自動表示しており、日本向けのサービスでは日経とのパートナーシップを皮切りに今後さまざまな分野のコンテンツパートナーとの連携を進めていきたい考えだ。
リービン氏はプレゼンテーションのまとめとして、「私たちはEvernoteを新しいワークスペースにしたい。スライドを作ったり、メールボックスをチェックしたりといった古い定義での生産性から脱却し、“生産性”の定義を書き換えたいのだ。どこに保存をする、どこに書いておくといった考えは古い。生活の中でベストなツールを持ち、ベストな作業をすることが“生産性”ではないか」とコメント。シーンに応じて複数のツールを使いこなす現在の生産性に対して、Evernoteは仕事で必要になるファンクションをワンストップで提供していきたいとの考えを示した。
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