クリスクに聞くタイのエンジニア採用事情--ウェブマーケティングのトレンドも

 自動車産業をはじめ古くから日本との関わりが多く、またマーケットとしても成長していることから、日系企業が東南アジアのリージョナルヘッドクォーター(地域統括拠点)を置くことも多いタイ。

 同国におけるウェブ開発市場の特徴やエンジニアの採用事情について、現地でウェブマーケティング事業を行うクリスクのタイ事業責任者である中島奉文氏に聞いた。


中島奉文氏。タイ・バンコクのオフィスにて

アジアハイウェイの合流地として市場が成熟

――タイにおける事業内容を教えてください。

 当社では、ウェブマーケティング事業、ウェブ制作事業、ソーシャルマーケティング事業、リアルプロモーション事業の4つを展開しており、日系企業だけでなく、ローカル、外資系企業も含む幅広いクライアントと取り引きしています。

 この国らしさが表れている仕事としては2つ。1つはFacebookページを活用したキャンペーンの企画・運用です。最近は状況が変わりつつありますが、3~4年前まではコーポレートサイトを持たず、Facebookページのみを開設する企業、特に中小がほとんどでした。なぜならタイのユーザーはFacebookページや投稿、広告に対して反応しやすく、サイトよりもリーチが取れるからです。

  • クリスクが手がけた旅行代理店のFacebookページ企画

 ユニークな企画が日本と比較しても多いと思います。当社が手がけた日系の旅行代理店のページでは、タイで最も高いビルの屋上で撮影した写真に噴き出しマークを載せ、「日本の方角に向かって、日本へのメッセージを投稿しよう」と呼びかけました。いいね!数が最も多かった投稿をしたユーザーに日本旅行をプレゼントするという企画で、ローカルの人たちが多く参加してくれました。

 2つめはウェブ制作です。タイでサイトを制作するのにかかる費用の相場は、ローカルの制作会社に委託する場合2~3万バーツ(約6~10万円)、日系の制作会社に委託する場合でも5~6万バーツ(約16~20万円)と非常に安価ですが、当社ではその価格帯の仕事を受けられません。ですから、ローカルの制作会社に委託する企業もいるのですが、サイト分析機能の導入など戦略的な構築が弱いため、当社でリニューアルすることが少なくありません。

――タイで事業を始めたきっかけやタイの魅力は。

 タイはアジアハイウェイの合流地であり、東西回廊も走る極めて珍しい立地です。日系企業のリージョナルヘッドクォーターや工場などがタイに多く存在する理由もこの立地にあります。この立地条件をもとに著しい発展を遂げるこの国のマーケットとしての魅力と、仏教という日本人に理解しやすい宗教側面、親日国家である点、他国の文化を比較的抵抗なく受け入れるタイの文化などを踏まえ、進出を決めました。

 周辺国と比較して、タイでウェブ事業を行うことのメリットは、マーケットだと思います。日系企業でもリージョナルヘッドクォーターを置くところが多いように、この国には大手企業が多く存在し、また工場が極めて多いため、エンジニアを必要とする仕事が多く存在します。仕事のボリュームと競合との競争も良いバランスで、決して競争が激しいわけではありません。

 マーケット以外では、周辺国よりも新しい技術に興味を示す人が多いことでしょうか。ただし、誤解がないようにお伝えすると、これは人次第です。

 クリエイティブにおいてもタイは強みを持っています。この国は東南アジアで珍しく植民地時代を経験していないため、独自の文化と感性が育ってきました。タイはこの地域のファッションリーダーですが、ウェブのデザインや映像の分野でもそれは当てはまります。東南アジア全域で使われるサイトやテレビCMに、タイで生まれた企画が採用されることも多いです。


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