クリスクに聞くタイのエンジニア採用事情--ウェブマーケティングのトレンドも - (page 2)

給与によって能力差が著しい円柱モデル

――エンジニアのスキルレベル、勤務態度は。

 日本と比較するとエンジニアの層が薄いため、日本から派遣したエンジニアによる教育が必要という話を聞きます。

 タイにいるエンジニアの層は、日本のように美しい三角形で形成されておらず、レベルとそこに存在するリソースボリュームは寸胴な円柱のように感じられます。つまり、給与によって能力差が著しいということです。月収3万バーツのクラスは日本では経験の少ないエンジニアで、一方10万バーツのクラスを採用すれば、その能力は驚くほど高いです。ただし、全般として安易なプログラムミスの発生率は日本人と比べて多いと思います。

 こうした構造になっているのは、日本のようにレベルが高い人がそうでない人を教育するような機運や環境がないからです。エンジニア向けの勉強会などイベントが企画され始めたのも最近になってからです。また、優秀なエンジニアの中にはフリーランスとして仕事をしている人が多いです。起業する敷居が低いからです。英語力に関しては、学生の頃にアメリカやイギリスなどに留学し、英語を話せるようになった若い人が増えています。しかし、一般的には話せない人がまだまだ多く、毎年、社会問題になっています。

 勤務態度は日本人とは大きく異なります。これはタイに限ったことではなく、東南アジアに共通することですが、スケジュールを守ることに対する意識が弱い。仕事が残っていても残業せずに帰宅することが普通なので、全プロジェクトの約10%が納期に遅延します。計画を立てる際には30%程度の余裕を持たせて見積もると安心でしょう。

 以上のことを踏まえると、タイで開発を行いたい日系企業は、少なくとも現地に日本人のブリッジエンジニアを配置し、クオリティ、そしてスケジュールを管理することをオススメします。

――エンジニアの採用状況は。エンジニア不足や他社による引き抜きに課題を感じている企業は多いようです。

 エンジニアの数は、著しくはありませんが伸びています。ただし、開発の需要が大きくなっているため、相対的に供給が不足しているように感じます。政府もそうした市場からの要望に応えるべく、情報系の学科がある大学を増やすなど施策を講じているところです。

  • クリスクのミーティング風景

 他の国と同様、エンジニアの転職は多く、彼らの給与は以前の日本のように高騰しています。職種問わずローカルの人たちの給与は毎年7%以上上がっていますので、企業としては10%程度上げてあげないと従業員が伸びを感じられません。タイに進出している日系企業のほとんどが負担を感じているのではないでしょうか。

 ちなみに、自社で採用したエンジニアの離職率を下げるために工夫をしている企業もあります。他社の事例ですが、ボーナスを3カ月ごとに支給したり、入社日からの日数×30バーツ(約100円)を給与に上乗せしているユニークな会社もあります。

日系企業が雇いたい人材の給与相場

――タイで組織を運営する上でのポイントは。

 タイで達成したい結果のイメージを進出前に文章化し、従業員と共有することをオススメします。また、会社の規模を拡大させるためには初期に優秀なマネジャーを採用しないと難しいでしょう。

 マルチタスク可能な優秀なマネジャー人材の月給の相場は約40~50万円。ちなみに、日本語ができてマーケティングができる人材を企業が雇うと月給は約7万バーツ(約23万円)、マーケティングだけなら約2.5万バーツ(約8万円)、日本語だけなら約3万バーツ(約10万円)が相場です。

 また、タイでは従業員に30日間の病欠期間が与えられる決まりがあるのですが、彼らは決して病気でなかったとしてもなんとかしてそれを使い切ろうとする傾向があります。不当な病欠を防ぐための工夫はした方がよいでしょう。当社では皆勤手当を設けたことがありました。

――最後に今後の展望を聞かせて下さい。

 現在、当社のクライアントは約半数がタイですが、残りの半数は東南アジアのタイ以外の国にいる企業です。今後は、タイ以外の国にいる企業や、日本から東南アジアに進出しようとする企業からの受注を増やしていきたいと考えています。また、カンボジア、ベトナム、インドネシアにも法人を設立する予定です。

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