日系のIT企業、もしくは投資会社による東南アジアのローカル企業への出資参画が盛んに行われているが、トランスコスモスもまた例外ではない。2013年11月にインドネシアのファッションEC「Berrybenka.com」、2014年3月にシンガポールのコスメEC「Luxola」、そして4月にはタイの電子書籍コマース「Ookbee」とそれぞれ資本業務提携をしたことを立て続けに発表した。
同社がローカル企業に参画する狙いは、単に参画企業からリターンを得ることだけではない。むしろ、日本で同社が展開している事業とのシナジーを高めることに重きが置かれている。参画する企業が提供するサービスの規模が拡大したときに発生するカスタマーサポートなどオペレーションの一部をトランスコスモスがアジア各国に置いている拠点が担う。またローカル企業のサービスを活用し、日本企業のASEAN地域でのEC進出やマーケティング支援に活かしたい考えだ。
今回は同社のASEAN事業開発統括部部長の松尾俊哉氏に、今年で設立7年目となるタイ拠点における事業戦略、またスタートアップ市場の概況について話を聞くことができた。
トランスコスモスのタイ現地法人はコールセンター事業を中心に同国で展開している。タイでの新規事業開発という観点では投資した企業は現時点でOokbeeの1社のみ。同社は同国のみならずマレーシア、フィリピン、ベトナム、シンガポールでもサービスを展開している。
電子書籍コマース用アプリのダウンロード数は650万を超え、タイのApp Store内では700日以上も売上トップ10にランクインしており、現在も更新中である。2011年のサービス開始後、現在までに600万人以上の会員を獲得しているが、2014年中にはこれが1000万人以上に増加するとトランスコスモスは見込んでいる。
同社がOokbeeへの参画を決めた理由は2つ。1つは冒頭でも述べたが、トランスコスモスの既存事業とのシナジー効果が期待できること。サービスが拡大したときに発生するオペレーションをタイもしくはインドネシアなど周辺国のトランスコスモス拠点で請け負う。
もう1つの理由は、Ookbeeがユーザーデータを持っていること。同サービスは現在電子書籍のみを提供しているが、近い将来、その他のカテゴリの商品も取り扱う総合系のECプロジェクトが開始される計画があり、これにより電子書籍コマースサイトから、総合的なEC企業へ成長する。
これはOokbeeがユーザーデータのアグリゲーター企業へと変貌を遂げるということだ。誰が何に興味を持っていて、どのようなコンテンツに反応しやすいのか、どこでどのようなプロセスを経てモノを買うのかといったデータを持つことができ、それらのビッグデータを活用したサイトになるという。こうした情報を活かして、東南アジア市場でデジタルマーケティングを展開したい日本企業を支援する。たとえば、ユーザーに対してプッシュ型の施策を実施できるようにすることなどだ。
松尾氏いわく、東南アジアにおけるローカル企業への出資参画は出口戦略を描きにくく、それはOokbeeも例外ではないそうだ。そのため、IPOや他社への売却は当面狙わず、長期的なパートナーとして連携し、サービス拡大を図っていく。トランスコスモスも、投資事業としての定量的な目標はあえて設けていないという。
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