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iPhoneの7年を振り返る(4)--AppleはiPhoneを中心としたエコシステムへ

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 iPhone、7年の歴史を振り返るコラムの最終回。これまで、iPhoneのハードウェアソフトウェア作り出したカルチャーについて触れてきた。今回は、現在発展途上中の新しいiPhoneの役割について、考えていきたい。

 筆者は、今後のiPhoneが作り出しつつある可能性について、次のようなものを考えている。

  • 人類のための「メインコンピュータ」
  • 生活のカギ
  • 「表現の場」と「対称性」

 今回はこの3つの可能性について話していこう。

PCを置き換えるのはスマートフォン

 パーソナルコンピュータは登場以来、我々にとって最も身近なコンピュータとして活用されてきた。ビジネス向けの市場が広がり、印刷、デザインやビデオなどのクリエイティブ、そしてインターネットの登場以降は、家庭でも重要な情報の入手および発信手段となっている。

 このPCという存在を置き換えるのは、スマートフォンであると考えている。

 iPhone登場当初の話を第1回目のコラムで振り返ったが、iPhoneはパソコンに比べて小さなディスプレイと貧弱な処理性能で、タッチパネルという直感的な操作性以外は、パソコンと互角の存在になり得るとは考えにくかった。あくまでパソコンの補助的なツールとしての位置づけだ。これは、当時のPDAやスマートフォンと同様である。

 PCとスマートフォンを強烈に区別しているのは、携帯性とパーソナル性だ。

T-Mobile Sidekick 3
T-Mobile Sidekick 3

 それを象徴する良い例として、米国コネチカット州グリニッジの女の子を取材したときの話をしよう。当時小学生だった彼女は、午後に学校から帰ってくると、真っ先に自分の部屋へ駆け込む。

 カバンを置く前にiMacの電源を入れて、カバンを置くと同時に起動音が鳴る。そしてAOLを起動し、さっきまで一緒にいた学校の友達とAOLメッセンジャーのチャットを始めながら、Backstreet BoysやNSYNCの情報、ライブのチケットをeBayで探すのだ。

 4年後、2006年に再び取材をした時、彼女のライフスタイルは一変していた。同じように学校から帰ってくると、それまでは真っ先に自分の部屋に駆け上がっていたが、そのままするするとリビングへ行き、お母さんと学校の話をし始めた。以前とは全く異なる光景に驚かされた。

 もうチャットに飽きちゃったのか、と思って話していると、カバンからT-Mobile Sidekick 3を取り出し、チャットも同時進行していた。現在のスマートフォンの原型のようなSidekick 3を手にしてからは、友人とのコミュニケーションや検索を自分の部屋に縛られることはなくなった。ちなみにこの端末はシャープ製だった。

 このとき、インターネットのコミュニケーションと情報取得の部分をPCから切り離し始めたことに気づいた。ポケットに入る端末で目的を達成できるとなると、他の行動の中に、コンピューティングが溶け込んでいく。裏を返せば、コンピューティングの使用時間が飛躍的に増えるということだ。

 こうした変化を実現することができたのは、PCではなくスマートフォンだったからだ。

 2013年に発売されたiPhone 5sはどうだろう。デスクトップクラスと銘打たれた64ビットプロセッサを搭載し、最大下り75Mbpsの通信速度を誇るLTEは、通信料金の高さに目をつむれば、米国の家庭に引かれている固定インターネット回線と同等か、より速い速度だ。処理性能と通信速度で、大きな差がなくなってしまったのだ。

 モバイルとパーソナルというスタイルの面で、コンピューティングを浸透させたスマートフォンが、PCと同じような処理性能と通信速度を持つようになったのが現在だ。ほとんどの人の大半の作業が、スマートフォンで実現できるようになり、ディスプレイなどスマートフォンを拡張しながら使うスタイルへと向かうだろう。

 iOS 8とOS X Yosemiteを投入する2014年、AppleはiPhoneを中心としたエコシステムへの移行を明確にしつつある。Yosemiteが動作するMacは、iPhoneに着信した電話やSMSに応答でき、iPhoneで出先で行っていた作業を引き継げる。まるでiPhoneのアクセサリのように振る舞うようになる。

 Mac中心からiPhone中心へ。Appleの提案もスマートフォンが人のメインコンピュータになるスタイルを指し示している。

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