もともと本が好きな人は、本の読み方を教わらなくても、大量に読んでいる間に、自分なりの読み方のコツを会得していくのだろうが、「本の読み方」というのは、あまり教わる機会がないものかもしれない。特に、大人になってから、資料として大量の本を読む必要がある場合、1文字ずつ悠長に追っていたのでは、時間がいくら合っても足りない。本書は、「読書の全技術」とタイトルにあるように、大人が必要とするさまざまなパターンの読み方を教えてくれる。
読書術というと、いわゆる「速読」に注目しがちだが、速読と一口に言っても、実際に目を速く動かすことや、視野を広く持つようにすることといった、スポーツを習得する時のような訓練が必要なことだけではない。重要なキーワードを拾いながら読む方法や、同時に複数の本をパラパラ見て、気になる箇所のみを読んでいく、あるいは続きを読みたいと思った本の続きを読んでいくといった方法なども紹介されている。
要は読書とは、1ページ目の1文字目から順番に文字を追っていき、1冊を読み終えたら次の本に取りかかるもの、という考えに縛られないことが重要なのだ。
著者の齋藤孝氏は有名な読書家であり、読書に関する著書がたくさんあるが、本書はその集大成ではないかと思えるほど、あらゆる読書の技術や読書に対する考えが詰まっている。普段から、読むのが遅くて困っているという人や、社会人になりたてで、仕事に関係する本(資料などの大量のテキストも含まれる)をどのように読めばいいのか分からないという人は、まず本書からあたってみるのがいい。
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