8月5日~8月11日のAppleに関連するCNET Japanのニュースをまとめた「今週のApple一気読み」。
日本はお盆休みとなる1週間。米国も、夏の休暇や新学期(Back to school)へ向けた最後の期間ということもあり、マーケットやニュースなどは落ち着きを見せている。しかし、世界を見渡すと、イラクとウクライナ情勢といった地政学リスク、エボラ出血熱の感染者拡大という衛生リスクなど、注視すべき大きなトピックが多く飛び交っている。
Appleにとって重要な地政学リスクの話題から、1週間のニュースを振り返っていこう。
Appleにとって、最も重要なカギを握る国は中国だ。市場としては依然として米国が最大であり、Appleは最もそれを重視しながら製品やサービスをデザインしているが、それらのデバイスを生産しているのは、一部の製品を除いて中国だ。
かつては、中核となるプロセッサの生産をSamsungに委託するなど、韓国も重要な国であったが、後述の知的財産権の争いによって韓国をリスクのある国・企業としてサプライチェーンから除外し、訴訟に専念できる環境を作ってきた。しかし中国は、いくらリスクが高いからといって、生産面と販売面で無視できる存在とは言いがたい。
中国では、Appleに限らず、さまざまな国家のさまざまな業種において、政府とメディアを活用した圧力をかけていく手法と付き合わなければならない。FacebookやTwitter、Googleなどのサイバー警察による検閲が行えないサービスをブロックし、特に米国系のソフト、ハードメーカーには「セキュリティの懸念」という理由による販売や政府調達の停止の決定、捜査などを行っている。今回Microsoftは独占禁止法違反という疑いで強制捜査を受けたが、欧州のそれと同一視すべきではなさそうだ。
先週、Appleは「中国政府の調達リストから製品が除外された」という報道がなされた。これに対し、中国のニュースサイトや政府、そしてApple自身が否定している。これまでの中国の政府とメディアが他国企業や製品に対して圧力をかけるというパターンとは異なっている。
中国当局、マイクロソフト事務所を強制捜査--独禁法違反の疑いで(8月7日)AppleとSamsungは世界中の裁判所で知的財産権に関する争いを繰り広げており、本連載でもフォーカスしてお伝えしてきた。先週、この争いに大きな動きがあった。米国以外で係争中の訴えに対して、AppleとSamsung双方が訴訟を取り下げることで合意した。
このアクションはSamsung側からの求めだったことが考えられる。背景にあるのは2点で、いずれも訴訟を続けることの方がリスクになる可能性を考えてのことだろう。
1つは、本連載で以前指摘した「FRAND条件」(Fair,reasonable,and non-discriminatory)だった。FRAND条件とは、標準技術特許など、製品の生産・開発に不可欠な技術特許について、独占することなく公平・合理的・かつ非差別的にライセンスすると、標準化団体等に「宣言」すること。
Samsungが欧州においてAppleを訴えた際、無線通信に関する特許侵害を指摘したが、これはSamsungがFRAND宣言を行った特許であり、公正にライセンスが行われるべきである点が重視され、SamsungによるApple製品の販売差し止め請求は棄却されている。
そればかりか、FRAND宣言を行った特許を活用して訴訟を起こしたことに対して、欧州委員会が独占禁止法での調査が行われており、独占禁止法が適用されると、売り上げに対する制裁金が課されることになる。Appleも裁判で仮に敗訴し、ある地域での販売差し止めなどが起きた場合のリスクを考えれば、訴訟を打ち切るのは悪い話ではないだろう。
2つ目は、SamsungもAppleもお互いの企業が最大のライバルではなくなりつつある点だ。iPhoneとGALAXY Sは、世界を二分するスマートフォンのトップブランドだった。GALAXY Sも、iPhoneに習って高級なスマートフォンとしてのブランドを作り上げてきた。
しかし、iPhoneはiOSが利用できる唯一のスマートフォンであるのに対し、GALAXY Sは膨大なブランドと価格帯でリリースされているAndroidスマートフォンの1つであり、スマートフォンの進化によって、廉価版のAndroidスマートフォンでも十分高性能で快適に楽しめるようになった。
主に中国企業における低価格モデルの性能がボトムアップすることの影響を受けている。低価格・高性能な中国製スマートフォンの脅威は、Appleに対しても同様だ。価格を思い切り下げることは考えにくいが、だからこそ、世界中でのブランド作りに専念すべきでだ。
こうした2つの条件から、AppleとSamsung双方による米国外での訴訟取り下げの合意が行われたと考えられる。
アップル、北米のモバイルウェブトラフィック量でサムスン抑え首位を維持(8月5日)次期iPhoneの発表イベントの日付が報じられるようになった。前号では10月発売という情報をご紹介したが、先週のニュースでは9月9日に発表という情報が流れてきた。例年通りの流れで計算すると、9月9日に発表された場合、9月19日発売という流れが予測される。
製品については、バッテリの拡大が言及された。iPhoneに限らずスマートフォンの現在のデザインは、画面サイズの大きさがバッテリサイズに直結することから、画面が大きくなり、バッテリが増加するというそれぞれの情報を補完し合うことになる。
生産する中国では、工場の爆発事件で多数の被害者が出ている。iPhoneを製造する工場ではないが、Appleの製品を生産するFoxconnの工場についても、安全検査による操業停止の可能性が出ている。
中国江蘇省の工場爆発事故、「iPhone 6」生産に影響か(8月5日)CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
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