松尾氏は、もともとトヨタ自動車九州で製造エンジニアをしていたが、2009年にリーマン・ショックが発生。一気にクルマの買い控えが起き、仕事が激減した際に、「(高級車である)レクサスを1分に1台も作る必要があるのだろうか」と疑問を感じたのだという。ちょうどその頃、複数人で1台のクルマを共有する“カーシェアリング”という業態が生まれていたことから、独立して同事業に参入した。
最初に手がけたのは1~2人乗りの小型電気自動車のカーシェアリング事業だった。当時、国交省が環境保護や世帯人数の減少などの観点から、電気自動車を推進していたためだ。自治体とともに3年間ほど事業を展開したが、需要がないことが分かりサービスを終了。この反省を活かして、本当にニーズのある事業を模索した結果、たどり着いたのがレンタカーの配車サービスだという。
「日本にはクルマを持っているのに週末しか使わない人が多い。そういう人にとっては維持費がコストになっているので、必要な時だけ自宅まで届ければいい。用途にあったクルマに着替える“持たないカーライフスタイル”を提案したい」(松尾氏)。
ただ、既存のカーシェアリングを使えばいいのではないかと考える人もいるだろう。この点について松尾氏は、カーシェアリング利用者の約8割が個人でかつ土日に集中するため、人気のエリアではなかなか予約が取れない問題が起きていると説明。そこから溢れた人は仕方なくレンタカーを使っていると語る。この影響もあり、一度は停滞していたレンタカー市場が再び拡大傾向にあることから、Veecle!にも需要があると見ている。
提携するレンタカー会社は現在2社だが、大手レンタカー会社を含む複数社から連携の打診を受けており検討中だという。また配車するクルマも、たとえば「テスラ・モーターズのロードスターに乗れる」といったキャンペーンを展開したり、ディーラーと提携してマイカーが欲しくなったユーザーに対して試乗車を配車するサービスなども検討していきたいという。
さらに将来的には、レンタカー会社だけでなく、利用頻度の低いあらゆるクルマを貸し借りできるプラットフォームに育てていきたいと松尾氏は話す。サービスが普及すれば、自家用車を手放して週末にVeecle!を利用したいという人も出てくるかもしれない。そうした顧客に対して、たとえば買取査定に出すと50万円のクルマを、現金40万円、Veecle!利用権40万円分の計80万円で買い取り、息の長い顧客にするといった施策なども考えているという。
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