“働き方の、これから。―Transforming Work”をテーマに7月30~31日に開催された、Google主催のイベント「Google Atmosphere Tokyo 2014」。日本社会のグローバリゼーション化や経営統合と再編、若年層の雇用問題、子どもを持つ女性の社会進出が進む昨今、企業や組織に求められる多様化する働き方についての講演やサービス、製品紹介などが行われた。
基調講演では、グーグル エンタープライズ部門 パートナーセールスヘッドの大須賀利一氏が総合司会を務め、7人の講演者が登壇し、ITやクラウド、モバイルを軸とした将来の働き方に関する講演を行った。
1人目は、Google エンタープライズ部門担当社長のアミット・シング氏だ。「The New Digital Business - Transforming Work デジタル時代の新しいビジネス - 働き方のこれから」と題し、Google Apps、Google Drive、Google Maps、Google SearchといったサービスやChromebook、Androidといったハードウェアデバイスを紹介しながら、企業におけるGoogleのテクノロジ活用の可能性と有用性について解説した。
シング氏は「デジタルに精通した企業は売上も収益性も平均より高い」と強調。また、Googleをはじめとするデジタルに成熟した企業の文化やあり方を調査した結果、得られた特徴として次のようにポイントを語った。
「第一に、社員はもちろん、ウェブでサプライヤーやパートナーなどの顧客とも大規模につながりが持てること。次にすべての社員の集合知が活用できること。高度なモバイル環境でリアルタイムに仕事をし、意思決定も極めて早いこと。抜本的にデータ志向が強く、すべての意思決定をデータを活用して行っており、テクノロジそのものがシンプルで直感的に使いやすく設計されていること。Googleはこういう原則を絶えず意識してきた」
2番目に登壇したのは、グーグル エンタープライズ部門 日本代表の阿部伸一氏だ。「モバイルテクノロジが推し進める仕事の変革、日本の経済成長」と題して講演を行った。「少子高齢化、女性の社会進出、若年層の人材活用、グローバル化など、社会構造が待ったなしで変化をし続けている中、これまでのワークスタイルが通用しなくなっている」と指摘。「これからは画一的なままのワークスタイルでは、個人も企業も多様化するライフスタイルについていけなくなる」とし、企業がさまざまなワークスタイルを推奨し、労働者がそれを選ぶといった働き方の変革の必要性を訴えた。
また、「新しい働き方を推進するためには新しいツールが必要。モバイルを中心としたデジタルツールやテクノロジが働き方を変える。モバイルテクノロジによりいつでもどこでも働けるようになる」と語り、調査会社が協力して独自に実施した調査結果で試算した経済効果は2億円にのぼることを紹介した。
3人目のG&S Global Advisors 代表取締役社長の橘・フクシマ・咲江氏は、日本を代表するヘッドハンターとして活躍してきたこれまでの経験を踏まえ、「グローバル時代の人財とこれからの働き方」と題して講演した。日本市場が抱えている大きな人材の課題として、グローバル人材の不足を挙げ、真のグローバルリーダーは「マインドセットの点で国境を超えて活躍できる人材」「インフラが変わっても汎用性の高いスキルを持った起業家的人材」「想像的問題解決能力を持つ人材」の3つを満たすことを要件とした。
一方、今や日本の国家戦略にも掲げられている女性の人材登用については「どれだけお題目を唱えても、“真の男女共同参画”を働き方の点でも徹底しなければ実現は難しい」と指摘。「女性が男性の領域に参画するとこれまでは考えられてきたが、男性が女性の領域とされた家事や育児に参加するのではなく、主体的に参画するという視点が必要」と述べ、女性の登用についてもマインドセットを変える必要があると強調した。
また、女性の人材登用については、グーグル 執行役員 CMO アジア太平洋地域 Google ブランドディレクター Women@Google Japan Chapter チェアの岩村水樹氏も「Work Smart, Innovate More, Live Happier / テクノロジが女性のためにできること」と題して講演。テクノロジで人々の課題を解決していくことを企業ミッションに掲げるGoogleの取り組みの1つとして、同日、女性支援のためのサイト「Work Smart, Live Happy」を開設したことを発表。日本の女性は第一子出産後に6割が離職するというデータを取り上げ、「働き方を変えること。これはテクノロジが女性のためにできることの1つ」とし、Googleのサービスを活用するワーキングマザーの1日のケーススタディなどを紹介した。
女性の人材登用に積極的な企業の社員として「男女差、個人差は当たり前。すべての人が成果にコミットする働き方」と題して講演を行ったベネッセホールディングス グループ新規事業開発室の鬼沢裕子氏は、育休からの復職率は9割、4人に1人がワーキングマザーという同社の実態を紹介。「高い復職率や女性管理職の割合を誇るものの、組織として特別な対応を取っているわけではない。ハードルが高くなる一定期間は積極的に応援をしていくというスタンスで、個人の成長と企業の成長を重ね合わせられるようにすることが大切。働き方に柔軟性を持たせることは労働生産性という意味でも効果的」と、“ワークライフマネージメント”の重要性を語った。
その他、グーグル SMB マーケティング統括部長の伊佐裕也氏の「インターネットの力で東北の復興を」と題した講演では、ITを活用した東日本大震災後の被災地の企業と支援希望者を結ぶ復興支援策を紹介。同 エンタープライズ部門 教育担当 日本統括責任者の菊池裕史氏による「教育の世界にクラウドを」と題した講演では、コミュニケーションツールとしてGoogleを活用している東京港区の広尾学園や、ネットを利用した学習機会を提供しているカーンアカデミーの事例が紹介された。
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