グーグルは7月30日から2日間の日程で、イベント「Google Atmosphere Tokyo 2014」開催した。今年のテーマは「働き方の、これから。-Transforming Work」で、柔軟なワークスタイルの実現を指南するセッションが、数多く設けられた。
30日午後には、全自動のクラウド型会計ソフト「freee(フリー)」を提供するfreee代表取締役社長の佐々木大輔氏が、「急成長するスタートアップにみる日本の中小企業の新しいかたち」をテーマに講演。起業のきっかけや同社製品を紹介するとともに、クラウドサービスが中小企業に与えるインパクトについて語った。
佐々木氏がfreeeを設立したのは、2012年。それまで同氏は、Googleで日本およびAPAC地域における中小企業向けマーケティングを統括していた。起業のきっかけについて佐々木氏は、「既存の会計ソフトはパッケージが主流で使いにくかった。中小企業の場合、経営者が会計や給料計算をしていることも少なくない。そうした状況を打破し、経営者が本業にフォーカスできるよう、バックオフィスの自動化を目指した」と語る。
freeeは、簿記の知識がなくても扱えるのが特徴だ。銀行やクレジットカードのウェブ明細と同期し、自動で会計帳簿を作成する。ほとんどの作業でユーザーは、プルダウンメニューから該当項目を選択し、承認するだけでよい。また同社は、2014年5月にクラウド型の給与会計ソフト(ベータ版)もリリースした。こちらも、専門知識がなくても給与関連事務作業をこなすことが可能で、給与明細をクラウドで配布することもできる。
freeeの成長ぶりは目覚ましい。2012年の創業当時2人だった社員は、2013年には40人に急増、オフィスも2回移転した。米国のベンチャーキャピタルなどから11億円を調達し、業績は堅調に伸びている。2013年7月時点で1万人以下だった利用者数は、2014年7月には10万人を超えた。
会社を運営するにあたり佐々木氏が徹底したのは、クラウドサービスの利活用である。同社は、社内の議事録やプロジェクト進捗管理などを「Google Apps」で行い、社員はブラウザベースで業務をこなしている。もちろん、会計ソフトはfreeeを使用し、Google Appsと連携させることで、バックオフィス社員のいない環境を実現した。また、外部のビジネス・パートナーとのやり取りもGoogle Appsで共有し、「紙ベースでの業務を徹底的に排した」(佐々木氏)ワークフローを構築したのである。
佐々木氏は、「日本の中小企業こそ、クラウドの利活用で業務を効率化すべき」と力説する。
日本の中小企業におけるクラウドサービス利用率は低い。米国が54%であるのに対し、日本は17%と半分以下だ。そしてそのほとんどが、メールやカレンダーなどの情報アプリであるという。佐々木氏は「クラウドの会計ソフトを利用している比率は、1%程度」と指摘する。
そのうえで同氏は、「クラウドサービス利用企業の労働生産性は高い。NRI野村総合研究所の調査によると、中小企業のクラウドシフト経済効果は。5.9兆円に達する」と指摘し、「クラウドサービスの浸透はまだまだこれからだ。しかし、より高い生産性と新しいワークスタイルの実現が、(少しずつではあるが)進み始めている」と、展望を示した。
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