4K、8Kや次世代スマートテレビのサービスの創成、普及を担う一般社団法人次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)事務局長の元橋圭哉氏に4K放送の意義について話を聞いた。後編となる今回は、導入期におけるハイビジョンと4Kの違い、4K、8Kテレビに普及に必要なトリガーとは何かについて聞いた。
実際には放送、家電、映像コンテンツ業界など、一部の業界に閉じないで連携して普及させていくのが理想的です。試験放送を実施すること自体が目的ではありません。その先に何を見据えるのか。新たな文化、産業を構築し、国民の暮らしをより快適なものにしていくこと、そしてそれを実現するようなビジネスモデルを確立することを目指す必要があります。
3Dは映像表現としては、今なお様々な可能性をもっていると思いますが、誰もが簡便に視聴することを前提とした、家庭に入る放送メディアとしての普及という面では限界がありました。4K、8Kでは短兵急に放送やテレビの普及を目指すのではなく、放送の役割、ネットサービスの役割、大スクリーンによるエンタテインメントなど、映像制作から配信、提供、そして他分野での技術やアプリケーションの活用に至るまで、バランスよく進めていく必要があると思います。
ハイビジョン放送は20年以上かけてシステムが練り上げられてきましたが、8Kはもちろん、4Kにしても番組、コンテンツの制作面でまだまだこなれていない面が残されています。もっとも象徴的なのがデータ量です。格段に大きくなったデータ量の取り扱いは制作者の頭を悩ませており、制作ワークフローの大きな改善が求められています。8Kとなればデータ量はさらに跳ね上がり、現行ハイビジョン放送から直接展開していくのは困難を極めることになるでしょう。
ハイビジョン放送黎明期との大きな違いですね。ハイビジョン開始当時は、かなり長い間プロフェッショナル用途の機材しかなく、アマチュアが扱えるようになったのはずいぶん後になってからのこと。4Kは撮影にしろポストプロダクションにしろ、現在すでに様々なレベルで取り扱いができるようになっている。逆にこうした裾野の広がりが、プロフェッショナル分野においても「4K放送をやるべき」というトリガーになっている面があるのかもしれません。
ロードマップ発表から試験放送開始までわずか1年という限られた時間の中で、関係者が最大限努力をしてきましたが、映像圧縮技術が成熟途上にあることや映画用に最適化された撮影、制作機材が主流で、必ずしもテレビ的な制作手法とマッチしていないことなど、課題が多いことも事実です。
テレビについては先ごろ各メーカーから新モデルが登場しましたが、初期と比べ色、コントラストなど改善された印象を受けます。受信機の進化やその普及が制作側、サービス提供側の奮起を促し、それがさらに制作システムの高度化や受信機の高性能化につながるという好循環が生まれるように努めていきたいと考えています。今後のさらなる進化にご期待いただけますようお願いします。
放送しかなかった時代に登場したハイビジョンと異なり、様々なネットサービスや便利なモバイルメディアが普及している今、4Kにせよ、8Kにせよ、「映像がきれいになった」というだけでは大きな普及は難しい。これらが花開くきっかけとして、まずディスプレイの大胆なブレークスルーに期待します。
例えばウォールディスプレイとでも呼ぶような、壁面がそのまま4Kや8Kのディスプレイになっていて、番組を視聴しないときには窓のように美しい風景を表示する、といったようなものが出現すれば、メディア環境は大きく変わります。
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