5月に行われたNHK放送技術研究所「技研公開2014」の様子を伝えた際、複数の読者からこんな声が伝わってきた。「いずれ8Kがスタートするのであれば、画質の劣る4K放送に意味などないのではないか」。
実際、6月にスタートした衛星放送での4K試験放送は、先の「2014 FIFA ワールドカップ ブラジル大会」期間中を含めお世辞にも盛り上がっているとは言えない。では、4K放送の意義をどう捉えればよいのか。4K、8Kや次世代スマートテレビのサービスの創成、普及を担う一般社団法人次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)事務局長の元橋圭哉氏に話を聞いた。前編となる今回は、8Kの現状について切り込む。
まず、8Kスーパーハイビジョンの現状について正確に把握する必要があります。技研公開2014では圧縮、伝送、受信機など放送サービスに必要な技術が多数紹介され、放送の一貫システムとして組みあがってきた印象を受けました。ただし、今はまだ研究途上やプロトタイプレベルでの話。番組制作で使用できるカメラ台数も世界で数えるほどしかなく、その撮影を経験しているのもNHKが中心です。製品としての普及や世界の放送局、制作スタジオで広く使われるというのはまだまだ、という段階です。
2016年に試験放送、2020年には本格サービスというロードマップが示されていることを考えればあながち早計とも言えませんが、少なくとも関連機器が量産され、多くの映像制作者たちがコンテンツ作りに取り組めるようになって初めて「8K時代到来」だと思います。その点、4Kはすでに機器が製品化され、ハイアマチュア用、民生用機器でも映像が制作され始めています。
世界で4Kのサービスが実用期を迎える中、さらにその先の8Kについて研究開発や実用化を日本が先導することはきわめて重要ですが、そこで一定の成果を挙げ、高い評価を受けたものがそのまま実用のビジネスに乗るか、というのは別の問題です。家庭に入っていくためには継続的なコンテンツの制作を可能とするエコシステム、ビジネスモデル作りが不可欠で、その壁は必ずしも低くないものと考えます。
ご指摘のとおりです。放送局やメーカーなどの供給者側が見誤ってはならない部分だと思います。国がロードマップを示したからその通り進めました、ではなく、視聴者やユーザーに受け入れられ、喜ばれるサービスを展開しなければなりません。4K、その先にある8K時代の到来を「壮大なフィクション」で終わらないようにするためにも、定着させるための努力や対策が求められます。
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