NHK放送技術研究所による「技研公開2014」の 一般公開が5月29日から開幕している。国内、いや世界的に見ても最先端といえる放送技術研究の成果を発表する場とあって、ともすれば一般視聴者には伝わりにくい展示も多々見られるのが同イベントの常であったが、ここ数年は直近のサービスにつながる内容も増え、純粋に楽しめる来場者の間口が広まった印象がある。
今回の技研公開でいえば、やはり「8Kスーパーハイビジョン(8K SHV)」関連、そして「ハイブリッドキャスト」がそれに当たるだろう。
まず8K関連について。衛星による4K試験放送実施が間近に迫る中、さらに高画質な8K放送はどこまで進んでいるのか。「8Kスーパーハイビジョン衛星放送システム」(展示番号3)、「8Kスーパーハイビジョンのケーブル伝送方式」(同5)、「次世代地上放送の伝送技術」(同16)といった展示を見ると、大容量映像データを各家庭に届けるための研究開発は一定の成果をあげつつあるようだ。
講堂「8Kスーパーハイビジョンシアター」では、高感度・低騒音化を実現した8K SHV「シアターカメラ」(同31で実機展示)で撮影したミラノ・スカラ座の舞台「リゴレット」のダイジェスト映像を上映。映像的にはあえてズームを交えず舞台全体をおさめることに終始しており、舞台の臨場感をそのまま味わうことができるだろう。
フルスペック8K SHV仕様の映像機器(同4)あたりも注目度は高い。フル解像度、フレーム周波数120Hz、階調12ビット、広色域表色系に基づいたカメラ、映像伝送光インターフェース、表示装置の展示だが、開発の段階として表示装置がややおくれをとっているのか、見た目のインパクトはもうひとつ。もちろん美しい映像であることに間違いはないが、研究段階であることを加味して見てもらうほうがいいかもしれない。
このほかにも「超小型120Hz 8Kスーパーハイビジョンカメラ」(同2)、「メモリー着脱型8Kスーパーハイビジョン小型記録装置」(同6)など、特に制作機材系の進展は例年のことながら目覚ましい。2020年本放送開始という従来通りの目標に「東京五輪開催」というビッグイベントが重なったことにより、研究開発現場の気合いがさらに高まっている様子が成果からもうかがえる。
2013年9月にサービスを開始したハイブリッドキャストは、対応端末が徐々に増えてくる中でいかに素早く中身を拡充していけるかが鍵。主導する立場にあるNHKはここまで段階的にサービスを広げてきたが、次世代の放送サービスとして本格的に認知されるためには民放各局の取り組みがますます重要となる。
今回の技研公開では、これまでに民放が試験的に行ったサービス事例が展示されたが、とりわけ高い完成度を示したのがTBS「ハイブリッドキャスト対応サッカー番組」。事前取材やリアルタイムで取得する大量のプレイデータを活用し、ハイブリッドキャストを通じてそれらを視聴者に提供した取り組みだが、評価すべきは「見せ方」、そして「通信端末との連動感」だ。
チームや選手個々の基本データからフォーメーション、パス交換率に走行距離といった細かなリアルタイム情報までをウィジェット形式でテレビ画面上に表示するサービスだが、各ウィジェット配置は視聴者個々が自由自在に選択可能。配置方法もスマートフォンやタブレット上でのドラッグ&ドロップで、直観的操作でテレビ画面をカスタマイズできる。
また、タイムライン表示で提示されたポイントを選ぶと、スマホやタブレット上でハイライトシーンをリプレイ再生することも可能。次世代型サッカー中継と呼ぶにふさわしい、これまでのテレビ放送サービスとは違う何かを体験できるはずだ。
なお、このサービスは今年1月に放送された「全日本高校女子サッカー選手権大会」だが、間もなく開幕する2014 FIFAワールドカップを含めた今後のサッカー中継全般で採り入れられるかは未定。画面にウィジェットを載せるという性格上、権利元の制約が厳しい中継で実現するまでには時間がかかるかもしれない。
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