日本で放送が始まってから、2015年で90年になります。ラジオからテレビ、白黒からカラー、ハイビジョン、衛星放送やインターネットの活用など、放送はその時々の最先端の技術を活用してジャーナリズムとして、クリエイティブとしてのサービスを高度化し、社会や人々の暮らしに貢献してきました。
かつて高画質テレビといわれたハイビジョンが今や「標準」となり、ハリウッド発の4Kが世界で普及しつつあります。そうした中、放送やVODなどのホームエンタテインメント分野はもちろんですが、様々な新しい産業や公共用途で4K以上に貢献が期待される8Kスーパーハイビジョンのシステム開発を、世界に先駆けてNHK放送技術研究所を中心に日本が進めていることは大いに意義のあることであり、ICT分野の国際競争力の観点からも素晴らしいことだと思います。
技術開発、映像文化の発展、新しい産業振興などへの期待という面で評価されるべきことでしょう。ただ、技術開発をいっそう促進するとともに、これをどうビジネスに育てていくのかという課題にも、できるだけ早期に、真剣に答えを見いだしていかなければならないでしょう。
そういう冷静な議論も必要だと思います。4Kに関していえば、映画の世界からスタートして映像制作のさまざまなジャンルに裾野が広がり、テレビ放送にも組み入れていくのが自然の流れと言う考え方があります。一方、アナログ放送の終了に伴いテレビ端末の売上が一段落し、価格も下落の一途をたどる中で、付加価値のあるテレビを売ることで市場を盛り上げる狙いがあるのでは、という指摘もあります。
一般視聴者からみれば「いまの画質で十分だ」、あるいは「地デジ化が終わったばかりなのに……」という反論もあるでしょう。それは一面の真理であり、立場が違えば私も同じことを言っているかもしれません。
しかし、高付加価値のテレビを売ることも含め、産業振興や文化振興、あるいは社会や暮らしをより便利で豊かにしていく観点で、今の放送、テレビでは実現できない新しいサービスを、誰かが始める前に自ら創造していくことも、大事なことではないでしょうか。
国や業界をあげてロードマップを作って、強引に推し進めることを「けしからん」という声があることは理解しますが、半面、それでもやらなければならない使命もあることはご理解いただければと思います。
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