家庭用として普及しつつある熱熔解積層方式は、ここ1、2年で目覚ましい進化と低価格化が進んでいる。当初は10万円台後半から30万円前後が当たり前で機械を覆う外板すらない製品や組立キットで販売されていた。しかし、最近では製品としてしっかり作り込まれて容易に扱えるものが10万円を切る価格で登場している。
また、機能面では造型中の様子をスマートフォンで監視したり、Wi-Fiでリモート制御したりできる製品も登場しつつある。熱熔解積層方式では、1つの射出ヘッドにつき1色の材料しか使えないため、使う材料によって色は選べるが基本的には単色の物体を作るしかなかった。しかし、射出ヘッドを2つ持つ2色同時に使用できるタイプも安価に登場するなど多色化も進んでいる。
多色化は、プロ用の3Dプリンタも同様で、色再現性はまだ不十分ではあるものの、PCの画面で色を付けてモデリングした物体がそのままフルカラーで造型できるようになっている。フルカラーの造型は主に粉末固着方式の石膏を使うタイプが主流であり、建築模型の分野では既に導入が進んでいる。
3Dプリンタでは、元となるデータのフォーマットがほぼ統一されており、メーカーを問わず単色の熱熔解積層方式では「STL」という形式が一般的だ。そのため、3Dプリンタ向けにSTL形式のデータを公開しているウェブサイトがいくつかあり、3Dモデリングができなくても、さまざまな物体を作ることができる。
例えば国土地理院で公開されているウェブ版地図では3Dプリンタ用の3Dデータが公開されており、富士山など任意の場所の地形模型を作ることができる。また、3Dモデリングソフト「Shade」を開発・販売しているイーフロンティアでは、無料のフィギュアデータを配布しており、女優 壇蜜さんのフィギュアデータを有料(4980円)で購入できる。3Dプリンタが進むことで、こうした新しいサービスも登場してきている。
とはいえ、熱熔解積層方式では、パスタ状の材料を積み上げるためどうしても表面に縞模様ができてしまうなど、工業製品と比べるとまだ造型したものの品質に雲泥の差がある。また、熱した材料が収縮するため、厳密な寸法を再現するのも難しいのも欠点だ。
さらに、下から材料を積み上げるため、橋のような下に支えがない形状では、仮の支えとしてサポート材というのを使って造型する必要がある。完成時にはこのサポート材を除去する必要があり、実際には手作業での工作精度も要求される。3Dプリンタは確かに何でも作れる夢のような機械だが、実際に使いこなすにはまだまだ手間と技術が必要になる。
次回は実際に3Dデータの作成から熱熔解積層方式の3Dプリンタを使った造型までの手順を解説する。
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