マレーシア進出で気をつけるべき3つのこと--funnel澤田代表

 中間層の拡大により市場としての成長が著しい東南アジア。その中でマレーシアは、2011年の名目GDPでインドネシア、タイに次ぐ3位の2878億米ドル。1人当たりGDPでシンガポール、ブルネイに次ぐ3位の9656米ドルと、域内では先進的な国として位置づけることができる(いずれも世界銀行調べ)。一方で周辺国と比較して日系ネット企業の進出の話題を耳にする機会は少なく、現地の事情はあまり見えてこない。

 そこで今回は、日本、中国、シンガポール、マレーシアに拠点を置くオンラインゲーム会社funnelの代表で、自身もマレーシアで10年以上生活する澤田将司氏に話を聞いた。マレーシアの国としての成熟度やネット市場の成長度合い、東南アジアに進出したい日系企業はどのように同国を活用でき、また何に気をつけるべきなのか。


funnel代表の澤田将司氏

英語、中国語、マレー語、インド語に対応できる強み

――funnelの事業内容を教えて下さい。

 大きく分けて2つ。オンラインゲームのポータルサイト運営とシステム開発です。前者は、中国などの会社が開発したゲームのライセンスを取得し、弊社がターゲットとする各国向けにローカライズした40タイトルをラインアップした「funnel.asia」というサイトを運営しています。会員ユーザー数は140万人以上で、230の国と地域で利用されています。

――マレーシアに進出したタイミングは。

 マレーシアで会社を設立したのは2007年4月。当時は日本のキャリア公式サイトの構築をマレーシアでのオフショア開発で行っていました。2010年頃からマレーシアのエンジニアの人件費が上がり始めたことから、同国が消費マーケットとして育ってきたことに気がつきました。そうしたことがきっかけで「日本だけに依存しないビジネスをやりたい」と思うようになり、当時マレーシアでも流行していたオンラインゲーム市場に参入しました。


「funnel.asia」

――そもそもマレーシアを選んだのはなぜでしょう。

 まずは「言語」です。この国には、英語、中国語、マレー語、インド語をそれぞれ話せる人がいます。世界中のあらゆる市場に対してゲームを始めとするデジタルコンテンツを開発・配信していく拠点には欠かせない要素です。次に、地理的に東南アジアの中心に位置しており域内の移動に適していること。続いて、域内では比較的豊かな国であり生活がしやすいこと。最後に、エンジニアの人件費が安いことです。会社を設立した当時、1人当たりの月給は4~5万円程度でした。

――今でもエンジニアの人件費は抑えられていますか。

 いいえ。あらゆる職種の中でもプログラマー職は需要が大きいため特に給料が高く、今となっては一般的な水準が月給20万円ぐらいにまで上がってしまいました。この国のインフレ率を考慮すると、給料は毎年少なくとも10%程度は上がっていかないと、彼らは自分たちの給料が上がっていることを実感できません。

――生活の拠点を日本、中国、シンガポールではなく、マレーシアにするメリットは。

 弊社の開発拠点がマレーシアにあり、そこで働くエンジニアの近くで仕事をしていたいためです。また、治安が良く、街は衛生的で、家族と住んでも安心だからです。

――なぜエンジニアの近くで働きたいのでしょう。

 世界中のあらゆる市場に対してサービスを展開していくためです。例えば中国のゲームタイトルを日本に持ってきて、それを米国に向けて展開するというのは難しい。かといって、私が日本からマレーシアにいるエンジニアをリモートで管理することは不可能。インターナショナルにサービスを展開したいときは日本にいないことのメリットもあるのです。

――マレーシアにおけるネットの利用状況は。

  • 首都クアラルンプールの経済発展の象徴である高層ビル「ペトロナスツインタワー」

 ネットの普及率は70%程度、スマホの普及率は日本と変わりません。こちらのネット回線は日本と比べれば脆弱ですし、田舎に行けばADSLで接続しているような状況ですが、首都クアラルンプールの主要な場所には光ファイバーが通りはじめ、劇的に改善されています。その影響で街中のネットカフェが相次いで潰れています。

――ネットサービスの成熟度はどうですか。

 国民が英語が読めるため、Facebookなどグローバルで展開されているサービスが人気です。そのことは一方で、この国独自のサービスやコンテンツが生まれにくいことも意味します。地場の企業が運営するニュースサイトやEコマースサイトも出てきていますが、儲かっているところはほんのわずかです。

――Eコマースは根付いているのですか。

 はい。LCC大手のエアアジアの本社がマレーシアにあり、ネットで航空券を購入する機会が多いことが背景にあると思われます。

――Eコマースに関わる流通インフラの状況は。

 以前は「荷物が届かない」「届いても壊れている」「壊れていたから問い合わせたが放っておかれる」なんてことは日常茶飯事でしたが、最近は外資系の参入もあり改善されてきました。さらに改善が進めば、Eコマース市場もさらに伸びる可能性があります。

――ゲームに課金するユーザーは増えていますか。

 いいえ。マレーシアに限らず東南アジアの若者は、課金はせずに時間をかけて地道にレベルを上げてプレイするのが特徴のです。しかし一方で、リワード広告など成果報酬型の広告キャンペーンへの参加率は高いです。

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