意外に思われるでしょうが、同じことは相手が海賊版でも言えます。つまり、海賊版を入手してコピーをとっても、個人の楽しみのためならば基本的に適法なのですね。もちろん、海賊版を作って売る行為自体は立派な犯罪ですから、あくまでもそれを入手する側は私的複製しても良いよ、という話です。
とはいえ、あまり勧められる話ではありません。しかも、オンラインの海賊版などについては実は特別な決まりがあります。数年前にネットを揺るがせた「ダウンロード違法化・刑罰化」という新法です。これは、(1)違法にネットにアップロードされている著作物を、(2)違法アップと知りながら、(3)ダウンロードして録音・録画する場合、私的複製は成立しないよ、というルールです。つまり、私的複製が成立しないのだから、無断でおこなえば著作権侵害ということですね。さらに、(4)その著作物が一般に販売されているものの場合には、罰則もあります。導入された時には大論争になりました。
導入派の理由はもちろん、「海賊版の蔓延がひどい」ということです。確かにオンライン海賊版の被害は深刻なものがあります。これは有料で売られている海賊版商品ばかりでなく、無断でコピーした音楽や映像を、Winny(ウィニー)やShare(シェア)のような「ファイル交換」ソフトでネット流通させる行為も含みます。その数たるや、最盛期2006年の日本での調査では、わずか6時間で違法と思われるファイル416万点の流通が報告された程でした(ACCS調査) 。
「MEGAUPLOAD(メガアップロード)」という米国の代表的な海賊版サイト(海賊版ストレージ)の関係者が、2012年はじめにFBI主導で一斉摘発された事件があります。この際には、押収金額が現金と高級外車だけで50億円、それまでに稼いだ海賊版配信のための会費収入は実に170億円という、凄まじい規模が報道されました。
しかし、ダウンロード違法化・刑罰化には、ユーザーの激しい反発もありました。反発の理由は、(1)ダウンロードする個人よりも、違法なアップロードをする輩こそ悪質なのだから、その取り締まりを強化すべき、(2)違法アップか適法アップかは、一見してすぐにはわかりにくい、(3)決め方が拙速すぎた、などでした。
(2)については、確かにダウンロード違法化の対象には「YouTubeに無断でアップされた動画」なども含まれます。その中には公式チャンネルのようにはっきり適法動画とわかるものもありますが、関係者が了解してアップされているのか無断でアップされているのか、一見してわかりにくいものも多いですね。「そんなことで中高生も含む一般人が刑罰の対象になるのは、行き過ぎだ」という訳です。
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