動画を制作し、YouTubeに投稿、そしてYouTubeを運営するGoogleと契約した企業から再生回数に応じて広告料を受け取る――それが「YouTuber(ユーチューバー)」だ。動画の内容は、お菓子やゲームなどをユニークな切り口で紹介したり、すっぴんの状態からメイクが完成するまでの様子を公開したり、普通は思いつかないようなこと、あるいは思いついてもやらないことにあえて挑戦したりと人それぞれ。
このYouTuberと企業がタッグを組み、新商品をPRしたり、ウェブキャンペーンを実施したりする動きが活発化している。
6月27日にはGoogleが、人気YouTuber「HIKAKIN」さんとコラボレーションし、Google Playにあるゲームタイトルの実況動画企画「HikakinGames with Google Play」を開始した。HIKAKINさんは、YouTubeチャンネル「HikakinTV」の登録者数147万人超を誇る。以前、アンファーが「スカルプD」のテレビCMに起用していたため、名前や顔を覚えている人もいるだろう。
このHIKAKINさんが執行役員に就任し一時期話題となったのが、YouTuber専門のマネジメントプロダクション「uuum(ウーム)」。代表取締役社長の鎌田和樹氏は、uuumの創業以前からHIKAKINさんをサポートしていた。
「かっちりとしたシステムは作らず2人でやっていた」と鎌田氏。その後、多くのYouTuberと知り合う中で、彼らが動画制作や渉外などで同じ悩みを持っていることを知り、uuumを立ち上げてサポートしていくことを決意したという。
YouTuber市場の現状、プロダクションの仕事内容などについて、鎌田氏に聞いた。
「動画元年」という言葉が毎年使われているような日本の状況に比べ、海外(特に米国)では、ウェブ動画の技術、在庫量、広告クライアントの出稿の意識などの面で大きく進んでいます。また、米国ではテレビとインターネットの広告予算が逆転しており、アドテクも日本より進んでいます。
そのような状況が当たり前になっている中、GoogleがYouTube動画の投稿者をサポートする組織「マルチチャネルネットワーク(MCN)」を作るなどの動きがあり、数万人規模のクリエイターを抱えるMaker Studiosも出てきました。
uuumでも企業から出稿いただいて動画を作ることもあるわけですが、米国では企業だけでなく国(省庁など)からも受注しています。
国というよりは“英語圏”が一歩先に行っています。人口が多いため動画の再生数も伸び、Googleから広告収益の一部を受け取れるパートナープログラムも成り立ちやすいですよね。ただ、その分、ライバルも多くいます。
まだ英語圏に追いついてはいませんが、広告代理店などがウェブ動画制作の専門チームを立ち上げるなど、活発な動きがあります。また企業も、大きな映像制作会社ではなくYouTuberに発注するというのが増えてきています。
その話はいろいろな人との会話の中で出ることがありますが、その際に「え、鎌田さんじゃないの?」と言われることがあります。私だっけ、みたいな(笑)。uuumもYouTuberという言葉を浸透させる一助になっているとは思いますが、そもそも誰が考えたのかはわかりませんね。
ちなみに、Youtuberの皆さんと話していると「2012年がYouTubeに過渡期」だったと聞くことが多くあります。それはおそらくスマートフォンの普及が関係していて、動画の視聴環境がPCからスマートフォンに変わり、YouTubeがより多くの人に知られることになった。知り合いのYouTuberにも、そのタイミングで動画制作を始めた人や、動画再生数が増えたことを実感している人が多いですね。
さまざまな企業から受注した案件や、uuumに所属するYouTuberの制作した動画の広告収益の一部で売上を立てています。YouTuberの作った動画のマネタイズを最大化するのが重要です。
企業から受注する案件が立て込むこともありますが、YouTuberには自分がやりたい内容の動画作りに専念してもらいたいので、通常の動画制作と、クライアントのいる動画制作とのバランスをuuumで調整しています。
大企業が一部門としてこの事業に取り組むのとは違って、uuumは会社そのものがクリエイター文化の中から生まれました。すべてがクリエイターベースで、会社を作ったのもクリエイターのためだと思っていますし、そこからやることの全てでクリエイターが中心となっています。そこがuuumと他の企業との決定的な違いだと思いますね。
スケジュール管理や取材の手配などさまざまなことをやっていますが、「コレとコレとコレとコレをやっています」という言い方をするよりは、YouTuberがいかにコンテンツ制作に集中できるような環境を作るかを常に考えて動いています。
たとえば、YouTuberから風邪を引いたという連絡があったとき、翌日には薬やのどアメを郵送で届けました。なので「コレはやるがコレはやらない」という考え方ではなくて、必要なことは何でもします。
またYouTuberプロダクションも浸透してきたので、これとは別にサポート事業に力を入れていこうかと考えています。
個々の業務内容は違うかもしれませんが、「いかにコンテンツ制作に集中できるような環境を作るか」という部分はどこも同じだと思います。
YouTuberとしての経験やノウハウをuuumに伝えてもらっています。uuumがYouTuberをサポートするために大切な情報です。
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