朝日インタラクティブは6月19日、「CNET Japan Live Summer あらゆるモノがつながる世界~IoTが起こす新ビジネスイノベーション」において、モノのインターネット(Internet of Things:IoT)への世界的な注目に対するビジネスチャンスやイノベーションのあり方についての講演やパネルディスカッションを行った。
「気象予報が変わる--天気による未来のライフスタイル」と題したセッションでは、ウェザーニューズ トランスメディアコンテンツ事業部マーケティング&セールスグループ グループリーダーの大木雄治氏が登壇し、ユーザー参加型による新しい天気予報のあり方について語った。
ユーザーに現在の空の様子などをレポートしてもらい、従来の観測データなどでは捉えきれない細かな天気の様子を伝えるウェザーニュース。スマートフォン向けにリリースしている「ウェザーニュースタッチ」は、1000万ダウンロードを超え、ウェザーリポート数は約650万人以上にのぼる。
「天気予報のレポートに参加するユーザーは、一日平均して13万人、大雨など天候が不安定な時は、最高で25万人が投稿してくれる巨大なネットワークとなった。他にも、独自に設置している観測インフラが数1000カ所以上ある」(大木氏)。
ユーザーの日々の投稿がウェザーニュースの予報の肝であり、「データによる“観測”とみんなで作る“感測”。つまり、データと人の五感の情報で作られた予報」だと大木氏は語る。
ウェザーニュースのユーザーレポートによって、どのような天気予報サービスが生まれたのか。大木氏は、いくつかの例を紹介した。
まずは、2008年からスタートしたゲリラ雷雨防衛隊だ。これまでの天気予報の数値では、突発的な天候の変化に対応できず、ゲリラ豪雨の時間や場所を特定できなかった。そこで、ユーザーに参加してもらうことで、リアルタイムに天気の情報を収集して解析する試みを開始した。ゲリラ豪雨防衛隊は、不安定な天気の兆候がある地域のユーザーに対し、防衛隊隊長からのミッションと題したメッセージを送信する。現在地の天気の様子をレポートしたユーザーに対して、現在地のゲリラ豪雨の危険度を通知する仕組みだ。
「隊長からのミッションというゲーミフィケーション的な要素と、空の写真やレポートを送ったユーザーに対して危険度合いの通知を送ることで、ユーザーが参加したくなる仕組みを作った」(大木氏)。
現在では、約8万人以上ものユーザーがゲリラ豪雨防衛隊に参加。ユーザーのレポートとウェザーニュース独自のレーダーを通じ、予測不可能と言われたゲリラ豪雨を90%以上の捕捉率で予測できるまでになり、「ゲリラ豪雨メール」利用者に対して事前送信できるようになったという。
「参加者が増えるほど、情報の精度は上がる。ユーザーの使命感ややる気を喚起する仕組み作りで、すべての人に役に立つ情報を届けられる」(大木氏)。
ゲリラ豪雨防衛隊同様のユーザー参加のサービスとして、「10分天気予報」がある。ユーザーは、現在地の天気の情報を通知すると、その先10分ごとの天気情報を受け取れる。「ユーザー個人の予報通知によって、となり町の10分天気予報に役に立つ小さな貢献ができる」と語り、ユーザーの投稿が他のユーザーに役に立つ仕組みを構築している。
2004年から開始した「花粉プロジェクト」は、全国の一般家庭や医療機関、企業や学校などの約1000カ所に「ポールンロボ」という花粉観測機を設置し、リアルタイムに花粉を観測。そのデータや花粉の症状に関するレポートをもとに、1時間ごとの花粉予測や対策情報を提供している。また、花粉の他にも気温や湿度、気圧などを計測している。2014年で10年目となる同プロジェクトは、蓄積されたデータを参考に、より詳細な花粉予測や症状から最適な花粉対策を行う花粉対策サービスを提供するまでに成長した。
花粉プロジェクトの成果として、東日本大震災の影響による夏の電力供給不足対策として、冷蔵を使用するよりも窓を開けて外気を活用することを推奨する「ひらけ!窓メール」といった試みもなされた。同サービスは、ポールンロボを活用して室内の気温や湿度を計測し、室内環境や外気の関係、全国3000カ所の気象観測の気温データと体感などを分析し、窓を開けるよう促すサービスだ。ほかにも、花粉センサーでほこりや黄砂なども観測できるため、九州や西日本地区におけるPM2.5のリアルタイム観測にも役立てているという。
「ひらけ!窓メールなど、電力不足をウェザーニューズなりの方法で貢献できることも分かった。今後は、予報だけではなく、新しいライフスタイルを提供するサービスを作っていきたい」(大木氏)。
ウェザーニューズは、海外展開にも力を入れ始めている。グローバルアプリの「Sunnycomb」をリリースし、世界中のウェザーリポーターから空模様を集め、地球全体の天気の予報を目指している。大木氏は、世界中の天気ギークコミュニティを形成し、世界の人たちにライフスタイルや健康を提供していきたいと話す。
「グローバル展開に向けて、新興国を中心に、独自インフラや市販デバイス等を利用した観測・感測網の活用が鍵だと考えている。目指すは全世界70億人の気象インフラ」(大木氏)。
IoTにむけたこれからの時代について大木氏は「気象と市場においてはIoT with Human Perception、 つまり人の五感こそが重要な意味を持ってくる。人の感覚をどのように活用するかだ」と語った。
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