スマートフォンの有料サービスにおいては、どのようなニーズがあり、どのような工夫が必要なのだろうか。ここからは、スマートフォン有料サービスに対する今後の意向などについて考察を進めていく。
電子書籍や電子新聞、音楽・動画配信サービスなど既にデジタル化が進み、サービス提供されている有料コンテンツは多岐にわたっているが、これまで利用していたリアル商品からデジタルサービスへの移行意欲について聞いてみたところ、全体的にはまだそれほど高い移行意欲は感じられない結果となった。とはいえ、図には示していないものの、10代においては「音楽」「ドラマ」「コンサート映像」「映画」などの利用意向が高く出ていたほか、男性40代以降においては「新聞」が高いなど、年代別に異なる特色が現れている。リアル媒体からデジタル媒体への移行については、このような年代別のニーズの高まりとともにゆるやかに進むのではないかと想定される(図:7)。
反対に、デジタル媒体に切替えない理由について聞いてみたところ、「電子版では読みにくい・見にくい」「スマホでの利用だと電池容量が気になる」「画面が小さいから/もっと大きな画面で見たい」といった視覚面、電池消費に対する意見が目立っている(図:8)。
また若年層を中心に「電子版だと形に残らないため、所有感がない」といった理由も上位に挙がっており、形あるものに対するこだわりも感じられた。好きなアーティストや作品などといった実際の「もの」に対するこだわりについては致し方ないところだが、前述の読みにくさや見にくさ、電池消費などについての不満は、今後スマートフォン利用に慣れるに従って徐々に解消されていき、それに伴ってデジタルサービスへの移行が進んでいくのではないかと想定される。
図7で示した「今後切替えてみたいデジタル有料サービス」の結果においても、未だサービスを利用したことのないユーザーが多数存在し、実際の利便性を享受した経験が少ないと思われることからも、いかにしてサービスを試してもらい、その利便性を感じてもらうか、という点も重要と思われる。
更に、今後「有料でも使ってみたい」スマートフォンのサービスについて聞いてみたところ、「音楽鑑賞」「ゲーム」「映画視聴」などといった趣味やエンタメ系ジャンルが上位となったが、男性においては、「語学」「貯蓄/資産運用」「仕事/ビジネス」「株取引/FX」などといった自己啓発やビジネスに関連するジャンルへの意向もやや高く出現した(図:9)。
また、自由回答にて「運動と連携した健康アプリ(男性・44才)」などといったヘルスケア関連や、「子どもがぐずった時に役立つコンテンツなど、子育てについての内容が充実している物(女性・27才)」といった育児に関連する意向も散見されている。今後は趣味やエンタメなどにとどまらず、ビジネスやライフスタイルなど幅広いジャンルや生活をより便利にしてくれるサービス、専門的な情報や機能を持ったサービスなどの利用ニーズが更なる高まりを見せるのではないか。このようなニーズを鑑みつつ、適正な価格設定やサービス内容の充実、お試し利用の設置などにより、より多くの有料サービス利用機会、並びに長期に渡る利用を促したいところである。
※「スマートフォンレポート」は、5月27日発行の5月号(Vol.12)を最終号とし、休刊することになりました。それに伴い、この連載も今回をもちまして休載となります。ご愛読いただきありがとうございました。
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