スマートフォン利用がさらなる広がりを見せる昨今、スマートフォンに対応したサービスは有料、無料にかかわらず増加・多様化の一途を辿っている。このような状況のもと、有料サービスに対してユーザーはどのような基準で選択し、利用しているのか、またどのようなサービスであれば有料の価値を感じてもらえるのか。この点について焦点を当てつつ、スマートフォンにおける有料サービスの利用動向とその意識について調査した。
まずは、スマートフォンの有料サービスにおける利用実態について報告したい。2014年4月時点で、スマートフォン所有者における有料サービス利用経験率は約3割となっている(図:1)。
利用の高いサービスジャンルとしては、「ゲーム」「無料メールサービス(LINE等)のスタンプ素材」「音楽」が挙げられ、それぞれ30%を超える利用経験があった。特に「ゲーム」は50%を超える利用経験が示されるなど、半数以上に課金経験がある状況となっている。次いで、「天気」「乗換/地図/交通」「コミック/電子書籍」において、20%を超える利用経験が示された。「無料メールサービス(LINE等)のスタンプ素材」を除き、フィーチャーフォン時代より数多く利用されてきたサービスジャンルが上位に並んでおり、ジャンル単位で考えれば、従来の傾向がまだ引き継がれている格好となる(図:2)。
次に、有料サービスの平均利用期間について見てみると、「ゲーム」「エンタメ系(ゲーム以外)」「動画」といったエンタメ系コンテンツにおいては「1週間未満」と回答する人が最多となり、比較的短期で利用するユーザーが多い結果となった(「わからない」という回答を除く)。とはいえ、次に多い回答が「1年以上」となっており、気に入った場合は長期利用するといった傾向も感じられる。ゆえに、長期利用してもらうための工夫をいかに盛り込むかが重要であるとも言えそうだ。
一方、「便利ツール系」「天気/ニュース系」といった情報、ツール系ジャンルにおいては、「1年以上」が最多回答、「1週間未満」がそれに続く回答になるなど、エンタメ系とは正反対の傾向を示している。情報、ツール系ジャンルにおいては、一度気に入ると長期利用するユーザーが多い、もしくは長期利用を想定して課金登録するケースが多いのではと想定される。どちらにせよ、サービス内容を充実させつつ、その事実をわかりやすくユーザーに伝えることや、適正な価格を見極めつつサービス提供するといった環境整備など、少しでも長い期間の利用を促す施策展開を充実させたいところである(図:3)。
では、サービスに対してお金を支払うという意思決定において、何を最終的な決め手としているのか、逆にどのような事を理由に利用しなくなるのかについて触れてみたい。
まず、有料サービス利用の決め手についてだが、「無料で利用してみて、良いサービスであると判断した」という回答が最多となっており、無料での利用機会が重要な要素になっている事がわかる。図には表記していないが、特に50~60代にこの傾向が強く出現しており、高年齢層になるほどサービスを慎重に吟味する姿勢がうかがえる。次いで「他ユーザーのレビュー・評価」「価格の適切さ」といった理由が続いているが、男性は「他ユーザーのレビュー・評価」を、女性は「価格の適切さ」をより重視する傾向を示している。弊社の過去の調査結果などからも、サービス利用者が他ユーザーの評価・レビューに影響を受けるといった傾向や、価格については女性を中心にシビアに精査するといった傾向が出現していたが、本調査からも同様の傾向が感じられる結果となった(図:4)。
一方、利用をやめた(退会した)理由についてだが、「使わなくなった(退会した)有料サービスはない」という回答を除くと、「サービス内容に飽きたから」「サービスが不要になったから」など、サービス自体の魅力や必要性の低下によるものと、「利用料が高かったから」といった価格に対する不満が主要因となっている。スマートフォンにおいては多数の無料サービスが展開されていることもあって、ほかの無料サービスに乗り換えたからという回答が多いのではと想定していたが、実際はサービス自体に対する飽き、必要性の無さ、それに伴う利用料への不満が利用停止へとつながっている模様である。いかにしてサービスの品質向上と適切な価格設定を訴求できるかが鍵といえよう(図:5)。
また、有料サービスを利用しようと意思決定したにも関わらず、結局利用しなかったという「断念経験」についても調査してみたところ、実に6割近いユーザーに断念経験があった。その要因としては、「思っていたより価格が高かったから」が最多となっており、ここでも適切な価格設定の重要性が示されている。また、10代を中心とした「クレジットカード登録が必須だったから」といった回答や、男性にやや傾く形で「会員登録時の入力項目が多かったから」「会員登録のフローが長くて面倒だったから/分かりにくかったから」といった理由が続いた。利用価格に加え、決済手段の多様性、入力の簡便性、わかりやすさなどをしっかりと整備しておくことの必要性も感じられる(図:6)。
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