5月27日~6月3日のAppleに関連するCNET Japanのニュースをまとめた「今週のApple一気読み」。
米国カリフォルニア州サンフランシスコで6月2日に開幕したAppleの年次開発者会議WWDC 2014で、AppleはMac向けOS X Yosemite、iPhone/iPad向けiOS 8と新たなAPI群、そして新たな開発言語Swiftを発表した。抽選で選ばれた世界中の開発者は、これまで以上に開発者に向けられた発表内容に沸いていた。
アップル、新しいスマートホームプラットフォームをWWDCで発表か(5/27)WWDCのニュースを中心に、ニュースを振り返ろう。
WWDC 2014の基調講演は、Macからスタートした。タブレットの普及などにより、世界のPC市場全体が前年の出荷を割り込む状況が続いている。その中で成長している数少ないPCプラットホームがAppleのMacだ。
2013年6月のWWDC 2013で発表し、秋にリリースしたOS X Mavericksは無料で提供され、Macユーザー全体の54%が既にインストールした。基調講演でCEOのTim Cook氏は、Windows 8を引き合いに出し、Mavericksよりも1年前の2012年10月にリリースされたにもかかわらず、まだインストールベースの14%程度しか普及していないと指摘した。
Yosemiteのテーマは、iOSとの調和と連携だ。まず、アクア、メタルといったこれまでの画面デザインのテクスチャーから、iOS 7で採用したフラットで透明性のある、カラフルなテーマへと移行させた。アイコンやボタンなどもシンプルでカラフルになった。またメニューバーは長らく白しか選べなかったが、黒も選べるようにしている。
そして、iPhoneやiPadとMacを同時に所有して使う際の利便性を高めた。例えばiPhoneで書いていたメールをMacに引き継いで大きなキーボードで仕上げられる。さらに、iCloudやAir Dropといったクラウド、もしくはその場の無線通信を利用してファイルをやりとりができるだけでなく、MacからiPhoneの電話回線を使って通話やSMSの送受信を可能にした。
MacユーザーはiPhoneを選ぶ傾向にあったかもしれないが、今回のYosemiteはiPhoneを使っているユーザーがMacを選ぶ大きな動機を作ったと言える。
アップル、「OS X Yosemite」を発表--秋に一般向けリリース(6/3)AppleのiCloudは、ユーザーがデバイスの違いやクラウドそのものを意識せずにバックアップや写真共有を行うことができる仕組みとして開発されてきた。しかしDropboxやBox、Microsoft SkyDrive、Google Driveなどファイル共有からドキュメント編集まで、多機能でさまざまなクラウドサービスが充実している。ビジネスで利用する上で、筆者も含め、iCloudを主たるクラウドサービスとして積極的に選ぶサービスとは言えなかった。
AppleはiCloud Driveを発表し、こうしたクラウドの遅れを払拭しようとしている。
iCloud DriveはYosemiteと統合され、iOS上のアプリごとにフォルダが作られる。Macからこのフォルダを開けば、保存されている書類にすぐにアクセスできるほか、Macからファイルを送り込むことも簡単になった。もうケーブルをつないだり、iTunesの画面からファイルをアップロードする必要もない。
また、クラウドのストレージ追加料金も非常に安くなった。5Gバイトまでが無料。20Gバイト追加すると月額0.99ドル、200Gバイトは月額3.99ドルとなる。
一般ユーザーにとって、追加ストレージを利用する最も大きな動機は写真のデバイス間共有だろう。新しいiCloudの写真共有は、フォトライブラリを丸ごとMacやiPhone、Windows PCと共有できる。iOS 8には新たに高度な写真編集機能が搭載され、編集した写真も瞬時にデバイス間で同期される。
アップル、「iCloud Drive」を発表--OSとの統合やUIを強化(6/3)続いてiOS 8だ。2013年のWWDCで大幅にデザインを変更しモダンなモバイルOSへと生まれ変わったiOSは、2014年もバージョンアップし、2013年からの新しいデザインをさらに洗練させながら、新機能を追加している。
iOS 8は前述の通り、OS X Yosemiteとの連携を強め、MacとiPhone、iPad間で作業にContinuity(継続性)を持たせる取り組みが非常に印象的だった。例えばiPhoneに着信した電話をMacで受けて、そのままMacをスピーカフォン代わりに通話したり、これまでMacのメッセージで対応していなかったiPhoneに着信したSMSも、Macから読み書きできるようにした。
また、ユーザーの利便性を高める機能として、インタラクティブな通知とアプリ間連携が挙げられる。これまで通知は、メッセージの新着などを知らせる機能であったが、実際にそのメッセージに返事を書くにはアプリを切り替えなければならなかった。iOS 8では通知から直接返事を書いたり、Facebookならいいねをつけたり、アプリの切り替えなしで通知に対する「リアクション」をとることができる。
また、アプリ間連携は、アプリの切り替えを減らしながらスムーズにiPhoneやiPadを利用できるようにする機能だ。例えば、Safariでウェブを閲覧している際にBingの翻訳機能を使ってページを翻訳したり、画像をPinterestにアップする際に、JavaScriptのブックマークレットではなく共有メニューからPinterestアプリの機能を呼び出したりできるなど、機能単位でのアプリ活用の道が開けた。
会場と日本でWWDCの発表を聴いていた開発者から関心を集めたのがサードパーティー製キーボードだ。例えば手書きやジェスチャーによる入力キーボードを利用でき、日本ではApple以外の日本語入力システムの登場が期待される。
Family Sharingでは、家族6人までを1つの単位として設置し、カレンダーやリマインダの共有、位置情報共有、購入した音楽や書籍などの共有を行うことができる。アプリの購入やアプリ内課金についても、親のiPhoneの承認を受けるという仕組みで、親が予期しない課金を防ぐ仕組みが取り入れられた。
アップル、「iOS 8」を発表--「HealthKit」など新機能多数搭載(6/3)iOS 8の発表に合わせて、iOS 8 SDKもWWDC 2014で披露された。まず紹介したのは、App Store登場以来の最も大きな進化だった。ユーザーにとってはアプリの検索性、発見性を向上させるデザイン変更が行われ、アプリの動作イメージを動画でチェックすることができるようになった。また開発者向けには、ユーザーをベータテストに招待できるTestFlightを無料で利用できるようにしたほか、複数のアプリを束ねて販売できるバンドルにも対応した。
SDKの中での進化は、HomeKit、HealthKitの2つだ。前者はスマートホーム向けの開発キットで、Siriと連携し、例えば自宅の鍵の解錠や空調などを、Siriに命令してコントロールすることができるようになる。HealthKitは、健康管理や医療情報をプライバシーとセキュリティに配慮しながら扱うための開発キットで、これまでデバイスメーカーやアプリ開発者がバラバラに開発して扱っていたユーザーの健康データを1箇所に束ね、利活用できるようにするものだ。
その他、クラウドを活用するためのCloudKit、64ビットプロセッサの能力を最大限に引き出すグラフィックス環境Metal、カメラの焦点や露出をコントロールできるCameraKit、Touch IDをアプリから利用できるようにするAPIの公開など、非常に多くの「これまで制限がかけられていた仕様」が開発者に開放された。
アップル、「iOS 8 SDK」をリリース--多数の新APIを追加(6/3)今回の開発者向けイベントの中で、世界中の開発者にとって実質的なOne More Thingとなったのが、OS X・iOS向けの新しいアプリ開発言語Swiftの発表だ。これまでObjective-CとPythonでアプリを開発してきたが、より高速に動作し、プログラミングしやすい1つの言語としてSwiftを登場させた。
開発者を悩ませてきた問題を解決すると同時に、大幅な実行速度の高速化がメリットとなる。また書いたコードをその場ですぐに動作チェックできる機能などを備え、プログラミング初心者のアプリ作りへのハードルを下げ、更に開発コミュニティの裾野を広げようとしている。
SwiftがAppleの開発コミュニティにどのように受け入れられるかは、WWDCの基調講演後、1週間にわたって開催される開発者向けのセッションやハンズオンなどで諮ることになるとみられるが、日本でも開発者たちが積極的に勉強会などを開催し、新しい言語への移行の準備を始めている。
アップル、新しいプログラミング言語「Swift」を発表(6/3)CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
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