この連載では、シンガポール在住のライターが東南アジア域内で注目を集めるスタートアップ企業を現地で取材。企業の姿を通して、東南アジアにおけるIT市場の今を伝える。
前回に続き、アジアのスタートアップシーンを紹介するウェブメディア「Tech in Asia」が5月に開催したカンファレンス「Startup Asia」で取材したスタートアップ企業を紹介していく。
なにか特定のつながりを形成することに特化した“クローズドSNS”が続々と登場しているが、「InstaB」は赤ちゃんをノードにユーザーがつながりを作っていくサービスである。マレーシアを起点にシンガポール、香港、インドネシアに進出し、これまで4万3000人の赤ちゃんのアカウントが作られ、1分半に1枚のペースで写真が投稿されているという。
InstaBではその名前からも想像がつく通り、赤ちゃんの写真を投稿してつながりを作っていく。従来の写真共有アプリにないInstaBならではの特徴としては、赤ちゃんが生まれてからの日数や、そのときの気分をあらわす顔文字を写真に記載して楽しむこと。また、フィルタ機能やステッカーで写真を加工して楽しむこともできる。
InstaBは、2013年にアプリを公開し、2014年の1月にiPhoneアプリ、5月にAndroidアプリのリデザインが行われた。サービス開発のきっかけは、共同創業者でCEOのTang Tung Ai氏に子どもが生まれ、親にはもっとデジタルを活用したサポートが必要だと気づいたことだという。その思いがアプリにも現れており、「Baby Q&A」という機能では写真付きで質問を投稿し、他のユーザーからアドバイスを受けることができる。
このアプリへのニーズについてTang氏は、「親というのは伝統的に、子どもを初めて持ったときにはこれからどのようなことが起こるかを予測できず、自分たちの親や子どもを持つ友人に相談する。しかし、ソーシャルネットワークを使えば、自分と同じような経験をしたことのある親たちともっとつながることができる。このマーケットは非常に大きく、インドネシアだけでも2014年に400万人の赤ちゃんが生まれると言われている」と話す。
現時点でのビジネスモデルについて、1つは先述のステッカーの一部有料販売。グラフィックデザイナーが作成したものなどがおよそ0.99~1.99USドルの価格で売られている。そしてもう1つは、「BabyMag」と呼ばれるリアルのフォトアルバム。今後新たに目論んでいるのが、BtoBのビジネスモデル。赤ちゃんとその親たちが集まるプラットフォームを、彼らに対して宣伝広告やプロダクトプレイスメントをしたい企業やブランドに提供していきたいとTung氏は話す。
日本も含め、InstaBと類似したコンセプトを持つアプリは海外ですでにいくつか存在している。それらとの競争について同氏は、「23snapsやTinyBeansをはじめとする競合の多くは家族の中でのつながりを作ることにフォーカスしている。InstaBはそうではなく、家族間のつながりを作っていきたいと考えているため、ニッチな市場の中でも差別化は図れている」。また、「ユーザーのロイヤリティを高めるため、彼らからのフィードバックに基づきさらなる機能の追加に取り組んでいる」という。
ユーザーや写真の投稿を増やすための施策として、これまでは写真を加工するフィルタの種類を増やしてきた。今後は、親たちにどのようなシチュエーションで赤ちゃんの写真を撮るとよいかをお勧めするなど、ユーザーに日々のアイデアを湧かせるようなガイド機能を設ける予定だ。
今後の目標は、2014年中にユーザー数を100万まで伸ばすこと。そのための取り組みを後押しすべく、2014年中頃には資金調達を計画している。海外展開についてはインドネシアでのサービス拡大に注力しており、協力してくれるパートナー企業との協業を今後数カ月のうちに開始したいといている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」